認知症とうつ②

認知症の専門外来における認知症の原因として、比較的多いのが“薬の副作用”です。

例えば、消化器系の悪心等に処方されるナウゼリンやプリンペラン。その他、抗不安薬、安定剤や抗うつ剤などが原因としては多いようです。

薬の副作用の患者さんは、一見すると元気がなく反応も悪く、認知症やうつが疑われます。

しかし、原因の薬物を中止すると、劇的に改善します。

特に抗うつ剤は、うつの治療として適切であれば改善を示しますが、不適切に漠然と処方が続けられていると、逆に副作用をおこすので注意が必要です。

効果がないと判断すれば直ぐに中止する必要があります。

もう一つ注意が必要なのは、甲状腺機能低下症です。

当院では、認知症専門外来の初診では全員甲状腺機能を検査します。

100人に2-3人は甲状腺機能低下症であり、甲状腺ホルモンの投与で劇的に改善しています。

甲状腺機能は、疑わなければまず採血をしません。

ルーチンの検査として測定する必要があると思います。

認知症とうつ①

今回は、認知症とうつ病のお話を紹介します。

認知症を疑う場合、鑑別診断には、うつ病は必ず加えます。

高齢になって急に元気がなくなり、反応が鈍くなる。

ご家族としては当然“呆けてしまった”と考えるようです。

その場合、やはり認知症の評価が大事になります。

うつ病の場合、一見すると、とても反応が悪く、

“認知症が進行している?”

と感じますが、評価スケールではかなり認知機能が保たれています。

また、画像診断でも脳萎縮が加齢変化のレベルで留まっています。

そのような場合は、認知症よりうつ病を疑い、抗うつ剤を投与します。

この場合、注意が必要なのは、抗不安薬や安定剤でなく抗うつ剤を投与する事です。

専門外の医師では、抗うつ剤の投与に躊躇されるケースもあるようですが、積極的に抗うつ剤を投与し、その効果により診断をつける「診断的治療」が重要となります。

認知症予防と運動③

実際に認知症予防に運動機能を取り入れようとする試みも始まっています。

東京都では物忘れが気になる65歳以上の高齢者200人を対象に、ウォーキングなどの簡単な運動で認知症を予防する実証事業を実施するようです。

統計学的に有意な差が出れば、「国の介護予防事業にも生かしていく」計画のようです。

認知症を予防するために適度な運動が良い事はわかっていますが、具体的な方法はまだ分かっていないようです。

ただし以下の5つのポイントが指摘されています。

①ウォーキングなど軽い運動を続ける 

②退屈な運動は避ける 

③気分が楽しくなる運動をする 

④ピクニックや散歩など 

⑤友達や知人などと一緒にする 

を心がけると効果が期待できると思われます。

当グループのパワーリハビリも統計学的な考察をして、優位差を証明していきたいと思います。

認知症予防と運動②

加齢などで一度減った神経細胞は元に戻らないというのが従来の脳研究の常識でした。

その点から先回紹介した運動で海馬の神経細胞が増殖をしている研究結果は画期的なものでした。

しかし海外では、運動で脳の働きが良くなることは、これまでの研究からも知られていました。

記憶力に不安を感じる中高年300人を対象にした研究では、ウォーキングなどの運動プログラムを半年間受けた人たちは、認知機能が改善していました。

運動で認知機能が上がる事を確かめた研究もあります。

認知機能に障害がある精神疾患の患者さんに週3回の運動プログラムをやってもらうと、神経心理テストの注意機能や空間認知能力が向上していました。

このことは、機能的MRI(fMRI)でも証明されています。

運動により、現実的に脳機能が改善することが、細胞レベルでも証明もされたと考えられます。

認知症予防と運動①

「運動をすると脳の神経細胞が新しくできて、認知能力が保たれる可能性がある」

と指摘されています。

マウスを使った実験で、脳の海馬の神経細胞のもとになる細胞の数が、運動をしない高齢マウスに比べて2.4倍になっていたようです。

海馬とは、物事を順序立ててこなす「実行能力」や記憶など認知症で衰えがちな機能の多くを担う場所で、認知症になると萎縮することが多くなります。

以前に紹介した、認知症治療薬アリセプトの詳しい働きを調べたところ、脳内の神経細胞のもとになる細胞が増えて新しい神経細胞が増えていたようです。

つまり、運動は薬と同じような仕組で脳に働きかけている可能性があるのです。

運動が、認知機能の低下を防ぐ可能性があります。

実際、当グループで積極的に行っているパワーリハビリによって、認知症が改善するケースが見受けられるのは、このような理由からなのかもしれません。