“情動脳と呼ばれる大脳辺縁系”

喜怒哀楽を司る大脳辺縁系では、扁桃核というアーモンド形の小さな脳で快・不快の感情が発生します。

また扁桃核と密接な関係を持つ視床下部が感情表出に重要な働きをしている事も明らかになっています。

そして海馬は記憶を介して感情を示す反応に関係しています。

感情は五感から伝達された情報に対して大脳辺縁系かおこす行動といえます。

つまり大脳辺縁系は、人や物事の好き・嫌いを判断している非常に重要な器官です。

人間は、快感や喜びを感じるものには“接近行動”を起こし、不快感や怒り・恐れや悲しみを与えるものには“攻撃的または逃避行動”を起こし遠ざかります。

認知症の患者さんが、記憶が薄れても感情は残るという事実も、脳の3層を理解していればとても納得できます。

つまり認知症により大脳皮質の機能が落ちても、大脳辺縁系の機能である“感情”は残っていくと考えられるのです。

“反射脳と呼ばれる脳幹” 

脳には三つの層があることをご存知ですか?

“反射脳と呼ばれる脳幹”

“情動脳と呼ばれる大脳辺縁系”

“理性脳と呼ばれる大脳皮質”

という3層で構成されています。

それぞれの特徴をご紹介します。

脳幹(反射脳)は間脳(視床、視床下部)、中脳、橋、延髄から成り立っています。

大脳の調節系の中継点であり、体温調節・物質代謝・睡眠・生殖などに関与する自律神経系の中枢機能を持っています。

つまり生命維持に不可欠な自律神経や反射の統合を行っています。

従来、人間は理性脳(大脳)を発達させる事で、ますます進化していくと思われていました。

しかし結果はむしろ情緒不安定な人間を生み出し、自律神経失調症などが増加しました。

これは近代化によって脳幹を鍛える機会が減少した事も一因です。

例えば、体温調節を冷暖房だけに頼るのではなく、暑さ寒さの刺激をいれ抵抗力をつけ、自分の身体で調節できるようにしておく事は脳幹のコンディションを高める上でも大切です。

認知症の周辺症状としてのうつ

うつ症状は、認知症の周辺症状としても出現します。

認知症の側頭葉機能を示すMMSE検査が15点を切ってくると周辺症状が出現してきます。

周辺症状は、幻覚や妄想と同じようにうつ症状も出現してきます。

しかし、その際のうつ症状は、通常の“元気がない”“反応が鈍い”といったうつ症状とは少し異なります。

周辺症状の場合は、身体的症状として訴えられる事が多くあります。

“頭が痛い”“お腹が痛い・気持ち悪い”“腰が痛い”“体中が痛い”と執拗に訴えます。

鎮痛剤が処方されるも効果がなく、長期服薬で胃腸症状の副作用がおきるケースもあります。

制吐剤(ナウゼリン、プリンペラン)が漠然と処方され、その副作用でさらに悪化するケースもあります。

いずれにせよ、あまりに執拗な訴えがあり、他科受診でも改善しない場合は、うつ症状を疑います。

その際も思い切って抗うつ剤を投与します。

そして1ヶ月程度で効果判定をして、効果がなければ中止する事が重要です。

私の経験ではグループホームの入居者Ⅰユニット9人のうち1-2名は周辺症状としてのうつ症状が合併しており、抗うつ剤が効果を見せています。