転ばぬ先の杖 - 認知症専門医 長谷川嘉哉のブログ

認知症専門医師 長谷川嘉哉 ドクターズブレイン 長谷川嘉哉

電話してくる人は明らかに認知症!

投稿日:2017年4月28日

先回、75歳以上の免許更新時の認知機能検査で
"記憶力・判断力が低下している"と判断された方々が、
診断書の提出を求められ、その診断書作成を
多くの医療機関が断っているお話を紹介しました。
当院の経験ですが、
"免許更新時の認知機能検査で記憶力・判断力が低下していると判断された方は、
大部分は、認知症もしくは早期認知症であり、運転は不可です"
これは、当院にかかかってくる電話で診断できてしまいます。
電話口でいきなり、
「俺は認知症ではない。
免許更新時の検査で指摘されたが、
俺は正常という診断書を書いてくれ!!」
と相当に強引です。
当院が、
「あくまで専門医の診察により
運転の可否を判断します」と答えても
「いや俺は正常だから、専門医の診察を受けることさえ不要だ!
正常で運転が可能という診断書だけ書いてくれ!」
こんな無茶苦茶な理屈を押し通そうとして
意見が通らないと、声を荒らげて怒ってしまう始末です。
不思議なことに、今のところ当院に依頼されるケースの大半が
同じような態度なのです。
これは、明らかに前頭葉機能の低下です。
論理的思考が低下して、理屈が通りません。
そのうえ、理性のコントロールができずに
すぐに怒り出す。
正直、これだけで最低でも早期認知症。
これに側頭葉機能が低下していれば認知症です。
いずれにせよ、運転は禁忌です。
ということで、
平成29年3月12日改正道路交通法の
75歳以上の免許更新時の認知機能検査で
"記憶力・判断力が低下している"と判断された方々は
高い確率で運転は禁止です。
専門外の先生方は
運転の許可を出さないことが、
のちのち責任を問われるリスク回避に
つながるのです。

認知症&早期認知症(金).jpg

カテゴリー:認知症の鑑別

正常の証明は難しい!

投稿日:2017年4月26日

先回紹介した75歳以上の免許更新時の認知機能検査で
"記憶力・判断力が低下している"と判断されると以下のような書類をもらいます。
"診断書提出命令書"
あなたは、認知機能検査の結果、「記憶力・判断力が低くなっている」との判定結果をうけ
認知症の恐れ(疑い)があることから、道路交通法の規定により、指定する期日までに
道路交通法施行規則に定める要件を満たす医師の診断書を命じます。
この命令に違反して、診断書を提出しない場合は、運転免許の取り消し又は効力の停止等
の処分を受けることになります。
診断書の提出期限:平成〇〇年〇月〇日
備考:道路交通法施行規則に規定する医師の診断書の要件とは、「認知症に関し専門的な知識を有する医師又は主治医が作成し、命令を受けたものが認知症に該当しないか認められるかどうかに関する当該医師の意見が記載されているもの」
実は、この書類をもらった人たちが途方に暮れています。
なぜなら、この診断書の記載を各医療機関が拒んでいるからです。
確かに、認知症の専門医でない主治医は、
認知症の診断をすることは不可能です。
万が一、いい加減な診断の元
"認知症でなく、運転が可能"と誤診してしまってから
患者さんが、事故を起こせば
責任を逃れるわけにはいきません。
専門外である主治医はこの書類の記載を
断ったほうが賢明です。
一方で、認知症の専門医がいる基幹病院も
この書類記載を断っているようです。
そのため巡り巡って、当院への依頼の依頼が後を絶ちません。
もちろん、認知症専門医として
お断りすることなく、適切な診断をしたうえで
運転の可否を判断させていただきます。
医師は、
"病気であるという診断書"より、
"正常であるという診断書"を書くほうが
はるかに難しいのです。

診断書提出命令書(水).jpg

カテゴリー:認知症の鑑別

平成29年3月12日改正道路交通法施行!

投稿日:2017年4月24日

年々、75歳以上の高齢ドライバーによる死傷事故が増加しています。
平成16年~26年の10年間では、75歳未満に対して75歳以上の
死亡事故率は約2倍にも及びます。
実際に運転時の違反行為を調べると
記憶力・判断力が低下していると、
信号無視、一時不停止、運転操作不適、進路変更が
1.4~2倍高い割合で違反行為をしてしまうようです。
さらに平成26年度中に75歳以上が起こした死亡事故のうち、
事故を起こす前の認知機能検査結果をみると
4割以上が、認知症の恐れ、認知機能低下の恐れであったのです。
このような結果を踏まえ
平成29年3月12日より施行された、改正道路交通法では
75歳以上の高齢者に関する内容が大幅に変更されたのです。
免許証の更新期間が満了する日の年齢が75歳以上の方は、
高齢者講習の前に更新時の認知機能検査を受けなければなりません。
ちなみに検査は以下の3つの検査を実施します
① 時間の見当識:現在の年月日、曜日、時間を回答します
② 手がかり再生:1枚の紙に4つの絵が描かれている4枚を1分間で覚え、他の作業後に覚えた絵の名前を書きます。
③ 時計描写:時計の絵を書いて、指示された時間を書きます。
以上のテストは満点が100.12点で49点未満の方が
"記憶力・判断力が低下している"と判断され、
認知症の恐れがあるに該当するため、
専門医の診断を受けるか
主治医の診断書を提出しなければなりません。
ようやく、国も事の重大さに気が付き
行動を起こしてきたようです。

道路改正法(月).jpg

カテゴリー:認知症の鑑別

着衣失行

投稿日:2017年4月21日

先回まで、住と食の重要性を紹介しました。
今回は、衣食住の"衣"の話です。
衣食住の中では比較的軽視されているようですが、
認知症外来をやっていると、関わらないわけにはいきません。
皆さん、"着衣失行"って知っていますか?
比較的認知症の初期から出現する症状です。
難しい言葉で言えば、
"運動麻痺や高次機能障害に伴わない着衣障害"を着衣失行といいます。
着衣失行の症状は、
上着やシャツを着る際にその裏表、上下、左右が逆になったり、
ボタンを掛け違えたりします。
実際の臨床では、
一度に10枚近い服を重ねて着たり、
シャツの上にシャツ、セーターの上にセータなど
めちゃくちゃです。
さらに、季節感も欠如するため
真夏でも、重ね着をして熱中症になる方もいらっしゃいます。
あまりに無茶苦茶に大量の重ね着をすることで
動きずらくなり転倒・骨折につながるケースさえあります。

でも考えてみてください。
服を着るって何気なくやってますが、難しいと思いませんか?
下着を着て、シャツを着て、靴下をはいて・・・
それぞれに色や柄も組合わせます。
そのうえで、季節感をも考慮するのです。
我々は、毎日すごい作業を何気なくやっているのです。

ちなみに、奥さんが着衣失行になると
旦那さんが服を着せられます。
自分など、女性にどんな順番で何を着せればよいか自体わかりません。
患者さんのご家族には、
いつも奥様に素敵な服装をさせていらっしゃるご主人もいらっしゃいます。
とても素敵ですが、個人的には、頭が下がる思いです。

着衣失行.gif

カテゴリー:認知症に関すること

快食快便快眠

投稿日:2017年4月19日

先回は、認知症を含めた健康における
"住"の重要性を紹介しました。
今回は、"食"の重要性をご紹介します。
患者さんによっては、
"食事するのも面倒くさい"
"何を食べても、一緒"
"しょうがなく食べている"
などと発言される方もいらっしゃいます。
これらの発言には、
人生経験においては、患者さんより未熟な自分ですが、
さすがに
『食事ができることに感謝してください』と
意見させていただきます。

一方で
我々が理想とする、"健康で長生きをしている人"は
間違いなく、食べることが大好きです。
1日3食を欠かすことはありません。
"朝は食べられない"なんてことはなく
朝起きると、朝食を待っているほどです。
同様に昼食も、夕食も
決して御馳走でなくても
美味しそうに、若い人並みに平らげるのです。
美味しそうに食べることは
食に対する感謝につながっているのかもしれません。

このように食事に関心がある人は、
日常の生活も積極的です。
昼間にしっかり活動されますから、
空腹になってしっかり食べます。
つかれて夜もぐっすり眠り、
不思議と便通で悩まれる方も少ないようです。
結果的に、
快食・快便・快眠となり
健康で長生きになるようです。
どうも、食べるということは
"意欲"の根源であり、
健康長寿の基本であるようです。

快食快便快眠.gif

カテゴリー:認知症に関すること