認知症の大きな原因に歯周病が!専門医が医学的知見と実体験から解説

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Don't forget about your teeth

私は医師になって29年になります。つい最近まで、「歯周病というとあくまで歯科の世界のこと」と思っていました。しかし、最近の知見では、歯周病が全身疾患の原因であることがわかっています。

さらに、2017年11月には、英国科学誌「npj Aging and Mechanisms of Disease(エイジングと疾病メカニズム)において、「歯周病で加速するアルツハイマー病分子病態と認知機能障害」という論文が発表されました。ついに、歯周病が認知症を引き起こすメカニズムまで明らかになってきたのです。

今回の記事は、月1000人の認知症患者さんを診察しながら、歯科衛生士による口腔ケアを取り入れている長谷川嘉哉が、認知症の大きな原因として注目されてきた歯周病についてご紹介します。

1.歯周病とは

歯周病は、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患です。歯と歯肉の境目の清掃が行き届かないでいると、そこに多くの細菌が停滞し歯肉の辺縁が「炎症」を帯びて赤くなったり、腫れたりします。進行すると歯周ポケットと呼ばれる歯と歯肉の境目が深くなり、歯を支える土台(歯槽骨)が溶けて歯が動くようになり、最後は抜歯をしなければいけなくなってしまいます。

そんな口の中の問題と思われていた歯周病が、認知症の発症にも深くかかわることが分かってきたのです。

periodontal disease

歯周病の進行

2.歯周病を引き起こす口腔内細菌について

大人の口の中には、300~700種類の細菌が生息しているといわれます。

2-1.個人差がある細菌数

歯をよく磨く人で1000~2000億個、あまり歯を磨かない人では4000~6000億個、さらにほとんど磨かない人では1兆個もの細菌がすみ着いています。

母親のお腹の中にいる胎児は無菌状態の羊水の中で成長するので、口の中にも細菌はいません。しかし、世に生まれ出てからは、主に母親や家族からの細菌が新生児の口の中に移って定着します。母親の口の中に虫歯の原因となるミュータンス菌が多いと、子どもに移行して虫歯になりやすいことも報告されています。

Bacterias and viruses around tooth. Dental hygiene medical concept.

歯垢や歯石があるほど、口内細菌の数も増えます

2-2.特に注意すべきレッドコンプレックス

口腔内に常在する細菌のうち、歯周疾患(歯周病)の発症にもっとも関連が深いとされる3菌種を特にレッドコンプレックスとよびます。

  • ポルフィロモナス・ジンジバリス Porphyromonas gingivalis(P.g.菌):付着力が強いためバイオフィルムを形成しやすく、内毒素により歯の骨を溶かすほか、口腔内に悪臭をもたらします。
  • トレポネーマ・デンティコーラ Treponema denticola(T.d.菌):歯と歯肉の間の溝が広がる歯周ポケットから組織内および血管内に入り込んで増殖します。
  • タンネレラ・フォーサイセンシス Tannerella forsythensis(T.f.菌):歯周ポケットに付着してこれも内毒素により歯周組織などに悪影響を及ぼす。

2-3.不十分な歯磨きと加齢でレッドコンプレックスが元気になる

生まれたときには、これらのレッドコンプレックスを中心とした歯周病菌は口の中に存在していません。レッドコンプレックスの感染時期は中学生から18歳くらいの間といわれています。

そして20歳になると、おおよそ口の中の細菌の定着する種類が決まってきます。しかし、すぐに歯周病が発症せずに中年ころまで長い発症の時を待っているのです。

なぜ中年すぎると発症する人が多いのか? 実ははっきりとした理由はまだわかっていません。不十分な歯磨、加齢ともいわれ、何らかの条件により、口のなかの菌のバランスが崩れると悪玉レッドコンプレックスたちが元気づいて歯周病を発症するのです。

3.歯周病が認知症の症状を悪化させるメカニズムを解明した実験

歯周病が認知症の症状を悪化させる仕組みを、国立長寿医療研究センター、名古屋市立大学などの研究グループが解明ししました。歯周病菌の毒素がアルツハイマー型認知症の原因とされる脳の「ゴミ」を増やし、認知症の症状が悪化するのです。

3-1.実験の方法

アルツハイマー病モデルマウスに歯周病菌を感染させ、歯周病を発症させたマウスと対照マウスを3か月飼育し、両者の脳内に生じるアミロイドβという蛋白質の蓄積ならびに脳内レベルを定量。また、学習行動試験により認知機能の評価を行いました。

3-2.実験の結果

歯周病マウスでは、対照群に比べて脳内アミロイドβタンパク質レベルが約1.4倍に増え、脳内炎症分子(サイトカイン)の上昇が認められました。また、歯周病マウスでは、記憶学習能力の有意な低下が見られました。

3-3.考察

歯周病のマウスの脳内では、歯周病菌から出ている毒素や、免疫細胞が細菌を攻撃するために出すサイトカインが増殖。それによって、アミロイドβが作られる量が増えたと考えられます。つまり、歯周病の予防や治療で、アルツハイマー型認知症の発症や進行の抑制につながる可能性があるのです。

4.口腔内細菌叢の改善方法

ならば、口腔内の細菌叢を改善して歯周病を予防するにはどうすれば良いでのしょうか?

4-1.歯磨き

確かに食事の後は、口腔内細菌の活動性が高まるので歯磨きするのが理想的です。しかし、不充分な歯磨きを一日三回毎食後にするよりは、夜お休み前の一回だけでもしっかり時間をかけて丁寧に行き届いた歯磨きをした方が効果的です。

歯のみがき方の基本は、一歯ずつ丁寧に磨くことです。歯科医師・歯科衛生士に指導してもらい、自分の磨き方を修得しましょう。

歯と歯の間、歯の一番奥の部分、被せ物やブリッジが入っている部分など、歯ブラシだけでは汚れが取りにくい部位があります。そんな場所には、歯間ブラシ、部分みがき専用歯ブラシ、デンタルフロス(糸ようじ)といった。補助清掃器具を使います。

red background Vector illustration of a flossing

デンタルフロスの使い方

4-2.生活習慣の改善

  • 禁煙:タバコの煙の中には、タール、一酸化炭素、ニコチンをはじめとして、数多くの有害物質が含まれています。タールはヤニとして歯に付着し、さらにその上にプラークが付着しやすくなります。一酸化炭素やニコチンは、病原菌に対する抵抗力を低下させるとともに、歯ぐきの腫れを隠したり、傷口を治りにくくするために、歯周病を重篤化させます。歯周病の治療に際しては禁煙が必要です。
  • 良く噛む:早食いは食物を沢山食べる事につながります。ゆっくりと良くかんで、唾液と食べ物とをしっかりと混ぜながら食事を楽しむことが大切です。
  • 食生活の見直し:繊維の多い野菜、ビタミンA、C、D の豊富な食べ物や野菜、果物をとり、栄養のバランスのとれた食事を心がけましょう。

4-3.ロイテリア菌の力を借りる

L.ロイテリア菌とは人由来の乳酸菌で、虫歯の原因菌や歯周病の原因菌を減らす効果があるとされている菌です。

最近では、「L.ロイテリア菌を慢性歯周炎の汎用治療のSRPと併用することで、歯周ポケットの深さを計測する最も一般的な2つの方法(PPD、CAL)において、大きく症状を減少させた」や、「L.ロイテリ菌を摂取することで、歯肉の腫れ(歯肉炎指数により測定)と歯垢(歯垢指数により測定)が改善される」といった論文も発表されています。

現在、L.ロイテリア菌を含んだ、ヨーグルト、ガム、タブレットが販売されています。生活習慣に加えることも一案です。但し、あくまで補助的なものですから、歯も磨かずにL.ロイテリア菌を取っていても意味がありません。

SRP:歯周炎に対し従来汎用的に行われている治療法。スケーラーと呼ばれる金具を使い歯垢・歯石を除去した後、歯根部を滑らかに仕上げる方法。

5.定期的な歯科受診が最も有効

歯周病対策にはいろいろな方法があります。しかし、残念ながら歯科受診に勝る対策はありません。

5-1.評価のない対策は意味がない

評価とは「実施したことの成否を判定する」ことです。

いかなる対策も評価がなければ意味がありません。医科の世界でも、どれだけ素晴らしい治療法があっても、評価方法がなければ意味はありません。歯磨きがうまくできているか? 生活習慣の改善が効果を上げているか? ロイテリア菌が効果があるか? いずれも、歯科受診による評価が重要となるのです。評価の結果、効果があれば継続。効果がなければ修正する必要があるのです。

そのためにも自分で漫然と対策を行なうだけではなく、歯科医による正確で客観的なチェックが必要なのです。

5−2.歯科定期受診の効果は調査で明確

定期的に歯科受診をしている人は、すべての病気にかかる年間の総医療費が低くなることが、トヨタ関連部品保険組合と豊田市家も歯科医師会の共同調査で分かりました。医療費と歯科受診歴のデータを分析。定期的に歯科受診している人は、48歳までは総医療費が平均より高かったが、49歳を過ぎると平均を下回る傾向になったのです。

やはり歯をケアすると認知症だけでなく、身体全体の健康にも影響するようです。

5-3.髪を切るがごとく歯科を受診しよう

直近一年間に歯の健康診断を目的として歯科医を受診した回数を聞いたところ、アメリカでは「2回」と回答した人が最も多く、スウェーデンでは「1回」と回答した人が最も多いという結果でした。一方、日本で最も多かった回答は「直近一年間では受けていない」。その割合は57.5%と過半数にも及びます。

認知症にならずに、一生使える脳を手にれたいならば、髪を切りに行くと同じ頻度、1~3ヶ月に一度は受診したいものです。

一生使える脳を作る方法は以下の記事も参考になさってください。

新刊「一生使える脳〜」の内容を著者自らがコッソリお見せします

6.まとめ

  •  認知症を予防する方法や治す薬はまだなく、早急な予防法、新薬開発が望まれています。
  • 最近の研究では歯周病を惹起させると脳内へも炎症が波及し、アルツハイマー型認知症の原因分子の脳内レベルが上昇し、認知症(記憶学習能力低下)を増悪させることが発見されました。
  • 歯周病の治療や口腔ケアによってアルツハイマー型認知症の発症予防ならびに進行抑止できることが期待されます。
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