70歳を過ぎても性にお盛ん…医師が断言!異常性欲の放置は禁物です

70歳を過ぎても性にお盛ん…医師が断言!異常性欲の放置は禁物です

「元気なのかどうなのか、ちょっと度がすぎる……」。これに悩まれている方がいます。

男として認知症の症状の中で、絶対に治療してほしいものがあります。異常性欲です。

これは教科書等ではあまり載っていませんが、月に1,000名の認知症患者さんを診ていると結構あるものです。もちろん、患者さん及びご家族が自らはっきりと「異常な性欲で困っています」とは訴えられません。

患者さんの症状について時間をかけて説明したのちに、ご家族が何やら「言いたげ」な雰囲気を醸し出すと、ピンときます。こちらから「なにかご主人が奥様に変わった行動をしませんか?」と投げかけます。そうすると、奥様も安心してゆっくりと語ってくれます。それでようやくはっきりするのです。

異常性欲は、放置すると配偶者だけでなく他人様にも迷惑をかけ、トラブルになることもあります。この記事では、認知症専門医の長谷川が異常性欲の正しい情報、対処方法、治療法をご紹介します。

1.認知症における異常性欲とは

認知症や脳腫瘍で前頭葉や側頭葉に障害が生じると、タガが外れたような状態となり、それまで普通だった高齢者が周囲に見境なくセクハラ行為を働くようになることがあります。 想像できないでしょうが、朝も昼も夜も、奥さんに性交渉を求める患者さんがいらっしゃるのです。性欲の量も質も人それぞれですが、やはり度を超えている場合は「異常性欲」と判断します。

Beautiful senior couple in love outside in spring nature.
患者さんには違う世界が見えているかもしれません

1-1.認知症の症状の一種である

これは認知症の症状であり、一般的には認知機能障害が進行した際に出現する周辺症状の一つと考えられています。しかし最近では、認知機能が保たれている初期の段階でも出現していることがあります。

これは一つに時代背景があるかもしれません。昔は、配偶者の方は誰にも相談することができずに、症状が進行してようやく周囲が気がついたものです。しかし、最近では親子間のコミュニケーションも良好になり、比較的早い段階で、配偶者の方も子供さんに相談できる関係が構築されているようです。

いずれにせよ、訴えづらい症状ではあるため、正確には実体把握されていないのだと考えられます。

1-2.よくおこるトラブルの例

  • それまで普通だった高齢者が周囲に見境なくセクハラ行為を働くようになる
  • 何十年もなかった性交渉を毎日強要される
  • 入居者の男性が、性衝動で入居者の女性を押し倒す
  • 廊下や風呂など公の場で自慰をしたり、陰部を介護者に見せつける

1-3.起きる理由

認知症になると、前頭葉の機能低下でそれまで抑制しいていたことが『おおっぴら』になります。さらに社会的認知の障害が起きて周囲を気にしなくなると、ダイレクトに行動に及んでしまいます。

結果として、周辺症状の性格変化・性格の先鋭化といった症状と同じメカニズムが働いているようです。

2.異常性欲を起こしやすい人

あくまでも私の経験ですが、多いタイプの方の例をお話しします。

2-1.もともと抑制されていた人

全くの個人的意見です。やはり、教師、公務員といった長年規律を求められた人たちほど、抑制されていたもののタガが外れやすいようです。

Teachers write the problem on the Blackboard
「昔はまじめで全然そんなことはなかったのに」という方が多いです

2-2.血管性認知症とアルツハイマー型認知症の違いはない

原因疾患による発症に差は感じません。しかし、血管性認知症の患者さんは、運動障害が伴っていることが多いため、被害者?も容易に逃げることができるようです。そのため問題になることは少ないようです。

一方、アルツハイマー型認知症は運動機能が維持されています。身体が大きい患者さんですと、介護者でも恐怖を感じることがあります。

2-3.中等度の認知機能障害の方

認知症の原因に関わらず、30点満点のMMSE検査で20点を下まわると症状が出現しやすいようです。つまり、20点台であれば何とか理性を抑制できるが、さらに認知症が進行すると抑制できなくなってくるのです。

MMSE検査については以下の記事を参考になさってください。

3.放置するとどうなるか

多くの方に知っていただきたいのは、異常性欲は放置しないで欲しいということです。なぜなら、以下のような問題を引き起こすからです。

3-1.通所サービス利用の拒否

通所サービスでは、あまりに異常性欲の症状が強いと、スタッフにも負担をかけます。トイレ介助に入った介護者と二人きりになった際にセクハラ行為をされることもあります。経営者としては、スタッフを守ることも必要です。過去には、セクハラ行為にショックを受けて退職したスタッフさえいました。


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そのため、あまりに目に余る場合は、通所サービスの利用をご遠慮することもあるのです。

3-2.入所施設であれば退所処置も

入所施設の場合は、セクハラ行為が他の入所者さんに向けられることがあります。この場合、被害を受けた入所者さんの家族の気持ちを考えると、「退所」という処置を取らざるを得ないのです。

ご家族としても通所、入所問わず民間サービスが利用できなくなると、自宅で介護するしかなくなります。

Concept of accusation of a guilty businessman person
八方塞がりの状況になってしまいます

3-3.尊厳が失われる

長年まじめに生きてきたのに、人生の最後に「異常性欲」が出れば、尊厳が失われます。どんなに名士であってもそれまで築いてきた社会的信頼や実績もなくなるのです。地域社会で噂されることもあるでしょう。「あんたのお父さんは、最後は色ボケで大変だったのよ」とは言われたくないものです。

4.異常性欲の治療法

正直、男として絶対治療してほしいと思います。必死に生きてきて、最後は“あんたの爺さんは色呆けだったよ“とは言われたくないものです。幸い、最近では「異常性欲」をコントロールできる薬があります。

4-1.メマリーが著効

抗認知症の治療薬の中でもブレーキ系のメマリーは、異常性欲に対しても効果的です。もともとは認知症の進行予防の薬であるメマリーですが、幻覚・妄想といった周辺症状には著効します。異常性欲が中核症状か周辺症状かについては議論がありますが、患者さんの性衝動にブレーキをかけることで効果が出ていると思われます。

その効果については、配偶者さんが驚くほどです。主治医の先生も、知らない方の方が多いと思われます。異常性欲で困った場合は、患者さんからメマリーの使用をお願いしてみてください。

メマリーほかアルツハイマー薬の知識については以下の記事を参考になさってください。

4-2.従来はグラマリールが効いていたが、歩行障害が・・

血管性認知症患者さんの興奮等に効果があるグラマリールも、異常性欲には効果があります。グラマリール1錠25㎎を1錠もしくは2錠加えると著効したものです。しかし、グラマリールは副作用として歩行障害を認めるため、最近はメマリーが第一選択です。しかしメマリーのみで対応できない場合は、グラマリールを追加することもあります。

5.男性だけではない、女性にも起こるとは?

異常性欲は、男性だけでなく女性にも見られます。長谷川が経験したケースをご紹介します。

5-1.『触らしてよ、触りたいんだから!』

これは私の患者さんです。定期的に訪問診療をする際に、聴診器を胸に当てさせていただきます。この場合の姿勢は、医師である自分は“ノーガード”です。そうすると、そのお婆ちゃんは、私の股間を触ろうとします。もちろん、逃げるのですが、『触らしてよ、触りたいんだから!』とはっきり要求されます。

この方は、スタッフの男性のお尻も頻繁に触ります。女性スタッフへのセクハラ行為は、事業所としても毅然と対応します。しかし男性スタッフが対象だときつくも言えず、毎回股間をガードしながら聴診しています。

5-2.『せめて手でも握らしてください』

診察の際に抱き着いてくる女性患者さんも見えます。職員の方が引き離すのですが、その際に『せめて手でも握らしてください』と懇願されます。内心「自分が手を握ることで喜んでもらえるなら良いですよ」と言いたくなりますが黙っています。

5-3.卑猥な言葉を平気で言う

その他、とてもここでは書けないような卑猥な言葉を発する女性患者さんも見えます。それらを見ていると、スタッフの中には、“自分も認知症になればどんな行動・言葉を発するか?”と不安になる方も見えます。

6.クセは治らない

異常性欲という病気は薬で直ります。しかし、若いうちからことあるごとに女性の肩を抱いたり、手を握ってたり、体を触る男性がいます。これはある意味クセです。病気は治りますが、クセは治りません。若いうちから変なクセはつけないようにしましょう。

7.まとめ

  • 異常性欲は、患者さんの家族としては訴えにくい症状です。
  • しかし、詳細にお伺いすると、比較的良くみられるものです。
  • 異常性欲は薬物治療が良く聞きます。患者さんの尊厳のために治療をしてあげましょう。
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