廃用症候群・専門医が提言「リハビリで改善し健康寿命を伸ばそう!」

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最近、高齢のご家族の動きや反応が悪くなってきた事はありませんか? 何もしないで、一日中テレビを見ている。どこにも出かけない。そのうちに、歩行も不安定になり、意欲もなくなってきている。

そんな症状は、「廃用症候群(はいようしょうこうぐん)」かも知れません。

または医師にそのように言われたご家族もいらっしゃるかと思います。言葉のイメージからショックを受けられるでしょう。

しかし、廃用症候群は介護の現場ではよくあることなのです。

そして廃用症候群は適切に対処すれば、予防できますし、改善する可能性もあります。

そこでこの記事では、専門医の長谷川嘉哉が廃用症候群の正しい知識と予防法、そしていずれは誰しも少なからず廃用症候群を経て最期を迎えることについてお伝えします。

不安をおぼえている方はぜひ参考になさってください。

1.廃用症候群とは

「廃用」という言葉を辞書で引くと「用をなさなくなること」とあります(大辞林)。これだけだとなにか人間として使い物にならなくなった感じがします。しかし、「長い間使わなかったために,器官や筋肉の機能が失われたり,萎縮すること」ともあります。医学界ではこちらの意図で用いています。それに伴って起きる様々な症状を総称して「廃用症候群」と言っています。

つまり、過度な安静や、活動性の低下により身体に起こる様々な状態のことです。

原因は、入院などでベッドで長期安静にした場合だけではありません。日常生活の中で徐々に活動性が低下した場合も、廃用症候群を引き起こしますから注意が必要です。

廃用症候群は一つの病気ではなく、脳機能や身体活動が落ちることで生まれる以下のような症状を総合して言います。

  • 筋萎縮・・・運動量が低下し、筋肉を使っていないので、全身の筋肉がやせ衰えます。運動機能が落ちて、さらに動けなくなるという悪循環を引き起こします。そのため、歩行も不安定になります。
  • 関節拘縮・・・身体を動かすことが少ないと関節の動きも悪くなります。進行すると、四肢の関節が拘縮して固くなり、オムツ交換も困難となります。
  • 骨萎縮・・・骨は、運動して刺激を受けることで丈夫になります。運動量が減ると骨がもろくなり、何もしないのに背中の骨が圧迫骨折を起こすこともあります。
  • 心機能低下・・・心拍出量が低下することで、心不全を合併しやすくなります。
  • 起立性低血圧・・・急に立ち上がるとふらつくことで、転びやすくなります。

2.廃用症候群で特に気をつけるべきものとは

程度に差はありますが、進行してくると特に注意すべき症状や疾患の可能性が高くなります。以下にお伝えします。

2−1.誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)

私たちは、通常は、当たり前のように口から食べたり飲んだりしています。廃用症候群が進行すると、のどの奥の筋肉も衰えスムーズに食べ物を胃に送り込むことができなくなります。結果、食べ物が気管支に入ってしまって肺炎を引き起こします。これを誤嚥性肺炎といい、廃用症候群になると誤嚥性肺炎を繰り返し、徐々に全身状態が悪化していきます。

そのため、誤嚥性肺炎を予防するためには、正常の食事をトロミ食に変えたり、食事の際のベッドの角度を患者さんの状態に合わせて調整します。ちなみに、ベッドの角度は、30度から60度の間で調整する事がお勧めです。

Examining chest x-ray

誤嚥性肺炎がもとでお亡くなりになる方も少なくありません

2−2.認知症は原因であり、結果である

実は、廃用症候群になる前に軽度の認知症があった可能性があります。認知症の初期症状は意欲の低下です。これを放置すると廃用症候群につながります。したがって、意欲がなくなったと思われたら、出来るだけ早く認知症専門医の受診がお薦めです。特に意欲の低下には、イクセロン/リバスタッチパッチが有効です。

このような薬の使い分けについては以下の記事にて詳細にお伝えしています。医師、ご家族の方は参考になさってください。

専門医が教えるアルツハイマー薬の全知識&5つの使い方重要ポイント

廃用症候群になると、さらに認知症は進行してしまいます。つまり、認知症は、廃用症候群の原因にもなりますし、結果にもなってしまうのです。

2−3.褥瘡(じょくそう)

褥瘡とは、いわゆる「床ずれ」のことです。同じ体勢で長期間寝たきり・座りきりの状態になった場合、接触する皮膚や皮下組織が圧迫されて血行が悪くなります。その結果、周辺組織が壊死した状態を言います。

褥瘡というとベッドの上で長期間寝ていることが原因と思われがちです。しかし、一日中、椅子に座っていることでも褥瘡ができてしまいます。皮膚が部分的に赤くなっているような場合は、褥瘡の兆候です。廃用症候群になりかけていますので注意が必要です。

3.廃用症候群を予防・改善するには

廃用症候群は放置しておくとどんどん悪くなります。しかし、適切な対応をとることで予防と改善に繋がります。ここではその方法をご紹介します。

3−1.家庭でできること

廃用症候群の進行を止め、あらたな症状を予防するために、ご家族にお願いしたいことがあります。かかっていない方も参考にしてください。

朝は規則正しく起きてもらってください。そして、たんぱく質を中心とした食事をきちんととってください。できれば、一緒に散歩に連れ出していただくことも効果的です。

しかし、ご家族だけで廃用症候群の予防を行うには限界があります。予防改善のためにも、皆さんのご負担軽減のためにも積極的に介護系サービスを活用していただきたいのです。

昔から、患者さんに床ずれを作ると、『看護の恥』と言われたものです。2000年4月に介護保険が始まってからは、利用者さんが廃用症候群になることは、ケアプランを作成する『ケアマネの恥』と言えます。日頃からケアプランで廃用症候群を予防しましょう。以下にお伝えします。

3−2.デイサービスの利用

基本的に、高齢者は外に出ることを嫌がります。しかし、これは少し強引でもデイサービスに出かけてもらいましょう。デイサービスに行くためには、朝決まった時間に起き、朝食を食べ、デイで多くの人と交流します。このことが廃用症候群を予防します。

人によっては、「デイサービスは楽しくないから行きたくない」と言われることがあります。しかし、人間は、週に数日でも「嫌なこと」をすることが大切なのです。廃用症候群を予防して、出来るだけ元気に生活してもらうためと、「心を鬼」にしてデイサービスに行ってもらいましょう。

もちろん、地域にリハビリ特化型デイサービスがあれば、より理想的です。

3−3.訪問リハビリの活用

どれだけ一生懸命にお願いしてもデイサービスを拒否する方もいらっしゃいます。そんな時は、訪問リハビリをお願いしましょう。自宅に、理学療法士や作業療法士が来てくれるサービスです。あれだけデイサービスを嫌がっていたお婆ちゃんが、若い男性理学療法士さんが来ることになって、とても積極的にリハビリに取り組むようになったこともあります。

3−4.ケアマネの関連する事業所のサービスを漠然と使わせない

残念ながら、ケアマネの中には、お客様の状態よりも、自社のサービスに誘導することを主目的にされる方がいます。廃用症候群が進行してきた場合には、ケアプランの見直しを検討し、ケアマネの所属するサービス事業所に偏っていないか確認することも必要です。

4.廃用症候群が進むと

100歳を超えて活躍していた双子の「きんさん・ぎんさん」も、リハビリをすることで廃用症候群を改善しました。ですから、年齢に関わらず、リハビリは有効です。

しかしながら、人間誰しも最後の最後は、廃用症候群を経て亡くなることも知っておいて欲しいものです。高齢で、ベッド上で寝たきり状態になっても、リハビリを希望されるご家族もいらっしゃいます。しかし、かえって苦痛になる場合は、関節の拘縮予防程度にとどめることも大事です。

5.まとめ

  • 廃用症候群は予防することが可能です。
  • そのためには、適切な介護プラン作成が重要です。
  • ただし、どこまでも廃用症候群を予防できるわけでないことも覚悟しましょう。
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