認知症の周辺症状としてのうつ

うつ症状は、認知症の周辺症状としても出現します。

認知症の側頭葉機能を示すMMSE検査が15点を切ってくると周辺症状が出現してきます。

周辺症状は、幻覚や妄想と同じようにうつ症状も出現してきます。

しかし、その際のうつ症状は、通常の“元気がない”“反応が鈍い”といったうつ症状とは少し異なります。

周辺症状の場合は、身体的症状として訴えられる事が多くあります。

“頭が痛い”“お腹が痛い・気持ち悪い”“腰が痛い”“体中が痛い”と執拗に訴えます。

鎮痛剤が処方されるも効果がなく、長期服薬で胃腸症状の副作用がおきるケースもあります。

制吐剤(ナウゼリン、プリンペラン)が漠然と処方され、その副作用でさらに悪化するケースもあります。

いずれにせよ、あまりに執拗な訴えがあり、他科受診でも改善しない場合は、うつ症状を疑います。

その際も思い切って抗うつ剤を投与します。

そして1ヶ月程度で効果判定をして、効果がなければ中止する事が重要です。

私の経験ではグループホームの入居者Ⅰユニット9人のうち1-2名は周辺症状としてのうつ症状が合併しており、抗うつ剤が効果を見せています。

周辺症状の治療困難例?

前回、半分から2/3の症例で、周辺症状がコントロールできるとお話しました。

しかし、残念ながら周辺症状がコントロールできないケースもあります。

その場合、在宅生活を継続する事は極めて困難となります。

この場合、どこに入所もしくは入院するかの選択が重要となります。

まず、考えることは、介護保険施設で対応できるか否かです。

周辺症状が薬物でもコントロールできないわけですから、通常の介護保険施設では対応できない事もあります。

その場合、ケアマネやご家族は、いくつもの施設で断られ、途方にくれてしまいます。

その場合、精神科病院の入院を検討されていかがでしょうか?

入院ですので、医療保険に基づくため、主治医から紹介状が必要となります。

認知症の状況、周辺症状のコントロールが困難である点、介護施設での介護が困難な点を記載してもらいます。

そうすると、ベッドの空き具合では入院が可能となります。

以上の流れは、ケアマネさんには良く、お話させていただいています。

ケアマネとは、介護保険の枠にとどまることなく、社会資源を有効に使う必要があるのです。

精神科入院後、状態が落ちつけば、再び在宅に戻っていただくか、その間に次の施設を探す事になります。

この期間を次の準備のために有効に使う必要があります。

周辺症状の治療 ②

漢方や介護的対応でも周辺症状が改善されない場合、統合失調症に使われる抗精神病薬を使用することもあります。

通常、アルツハイマー型認知症の場合、セロクエルやリスパダールを眠前もしくは朝晩で0.5錠から1錠使用します。

血管性認知症の場合は、グラマリールを用います。

効果判定は1週間前後で評価します。

効果は、

「変わらない」

「周辺症状が改善した」

「効きすぎて、傾眠」

の3つです。

変化がなければ増量、効き過ぎれば減量します。

1週間以内の調整を数回行うと、半分から2/3の症例で、周辺症状がコントロールできます。

世間では、認知症は治療しても効果がないと思われがちですが、周辺症状がコントロールできるか否かは、在宅生活継続できるか施設入所になるかのポイントになります。

一度は、専門医の治療をお薦めします。

周辺症状の治療 ①

周辺症状の治療には、軽度の場合、漢方薬である抑肝散を使います。

一時、抑肝散が認知症の特効薬のように報道された事がありますが、中核症状の効果はあまり期待できません。

どちらかというと周辺症状の抑制に効果があります。

漢方にしては、比較的効果も早く発現します。

ただし、最近の漢方には錠剤もあるのですが、抑肝散にはありません。

粉は大変飲みにくいため、錠剤の開発を待ちたいものです。

周辺症状は、介護的な対応で改善する事もあります。

一つの事に固執して興奮状態になっている患者さんの視点を、別に向けていただく事で落ち着く事もあります。

なかなか、24時間365日終わりの無い、家族介護者に要求することは難しいものです。

グループホーム入所後に、認知症患者さんが良くなるケースの殆どは、ゆったりとした雰囲気・介護により周辺症状が改善することによります。