認知症による交通事故

先回は、てんかん患者さんの自動車の運転について指摘しました。

しかし、今後それ以上に問題となりそうなことが、認知症患者さんによる交通事故です。

認知症の患者さんは現在200-300万人と言われています。

認知症の患者さんの場合、初期の場合は、交通事故で病気が発見されることがあります。

例えば、アクセルとブレーキを間違えた、高速道路の逆走。

これだけで、診断が出来てしまうほどです。

また、認知症がかなり進行しているケースでも、田舎特有の交通事情で運転せざる得ないケースもあります。

しかし、やはり、尊い命を奪う可能性があるため、毅然と運転をやめるよう指導します。

認知症の場合、服薬だけでなく、社会との交流が大事という指導と矛盾しますが止むを得ません。

最近では、高齢者に対しては、免許の書き換えの際に、認知症の簡易検査がおこなわれます。

しかし、この検査もかなりいい加減で、相当認知症が進行していてもチェックできないケースが見受けられます。

本来なら、現状で行政として対策を取る必要があります。

やはり認知症の患者さんが重大な事故を起こさない限り、行政は動かないようです。

自分の患者さんがその当事者にならぬよう、これからも厳しい指導をせざるを得ません。

このような観点からも、年を取ったら、都会の公共交通機関の便利の良い場所での生活をお勧めしたいものです。

ホームページでの認知症無料相談

前回、認知症の治療薬としてアリセプトやイチョウ葉エキスをご紹介しました。

認知症には、中核症状と周辺症状があることは以前よりお話しています。

アリセプトやイチョウ葉エキスはあくまで中核症状に対する薬であります。

そのため、適応は、認知症の軽度から中等度が対象となります。

MMSEでは30点満点中、15点程度までとなります。

しかし、中核症状がさらに進行すると、周辺症状として、幻覚・妄想・易怒性・暴力行為・徘徊等が出現します。

当院の認知症専門外来では、まず患者さんに頭部CTと側頭葉の機能評価目的のMMSEと前頭葉の機能評価目的のFAB検査を行います。

その間に、ご家族からお話を伺います。

最近では、本人を診断しなくても話だけでほぼ診断がついてしまいます。

まず重要なことは周辺症状の有無です。

周辺症状が出現していれば、MMSEは15点以下である事が多いようです。

逆に、周辺症状が出現しているのにMMSEが15点以上の場合、アルツハイマー型や血管性以外の認知症を疑います。

その上で、頭部CT所見、さらに患者さんの運動機能を評価すると、かなりの精度で認知症の診断が可能です。

そのため、ホームページでも認知症の無料相談を受付けています。

項目は、当院の認知症専門外来でお伺いする内容が網羅されています。

遠方で、受診が困難な方には、ご利用をお薦めします。

認知症の「行動・心理症状(BPSD)」

 認知症が進行すると先回の中核症状だけでなく、感情的な変化や精神病的な言動が出現してきます。介護者が悩まされる症状です。このような症状を中核症状に対して「行動・心理症状(BPSD)」と呼びます。従来の周辺症状と同じ意味です。BPSDには、幻覚、妄想、徘徊、人格変化、暴力行為などがあります。この中では特に「お金を盗られた」といった被害妄想の頻度がもっとも多いようです。被害妄想は家族内のトラブルになる事も多く、 “実害”が出現します。この段階ではBPSDのコントロールが主体となり、認知機能障害自体の治療は困難となります。さらにBPSDのコントロールが悪いと在宅介護が困難となり、施設入所も考慮せざる得なくなります。

認知症の中核症状

 認知症は記憶する力、思い出す力、いまの日時と場所、周囲の人や状況を判断する見当づけの力、思考をめぐらす力、蓄えた知識と照合して判断や行動に結びつけていく一連の知的な働きが次第に落ちて自立した生活ができなくなっていく過程とみる事ができます。このような脳の障害で起こる認知症の知的な働きの障害を 「中核症状」 と呼びます。認知症は中核症状で始まります。この段階で専門医を受診していただく事が、望ましいのですがご家族として“実害”がないためかなかなか受診いただけないことが多いようです。

物忘れと認知症

 認知症専門外来を開いていると、最近物忘れがひどくなったという主訴で受診される方が多くみえます。物忘れと認知症の違いを簡単に説明します。

「昨日の夕食のメニューを覚えていますか?」高齢者の方を対象とした講演でこの質問をすると、不安げな顔をされる方が多くみえます。仮に思い出せなくても心配は要りません。メニューが思い出せないことは、「物忘れ」いわゆる「健忘」であり、病的意義はありません。しかし、「食べたという行動自体」が思い出せない場合は、認知症の可能性が高くなります。つまり内容を忘れる事は問題ありませんが、行動自体を忘れると問題となります。