認知症の中核症状

 認知症は記憶する力、思い出す力、いまの日時と場所、周囲の人や状況を判断する見当づけの力、思考をめぐらす力、蓄えた知識と照合して判断や行動に結びつけていく一連の知的な働きが次第に落ちて自立した生活ができなくなっていく過程とみる事ができます。このような脳の障害で起こる認知症の知的な働きの障害を 「中核症状」 と呼びます。認知症は中核症状で始まります。この段階で専門医を受診していただく事が、望ましいのですがご家族として“実害”がないためかなかなか受診いただけないことが多いようです。

物忘れと認知症

 認知症専門外来を開いていると、最近物忘れがひどくなったという主訴で受診される方が多くみえます。物忘れと認知症の違いを簡単に説明します。

「昨日の夕食のメニューを覚えていますか?」高齢者の方を対象とした講演でこの質問をすると、不安げな顔をされる方が多くみえます。仮に思い出せなくても心配は要りません。メニューが思い出せないことは、「物忘れ」いわゆる「健忘」であり、病的意義はありません。しかし、「食べたという行動自体」が思い出せない場合は、認知症の可能性が高くなります。つまり内容を忘れる事は問題ありませんが、行動自体を忘れると問題となります。

神経内科専門医

 先回、認知症の4大原因疾患を紹介しました。しかし認知症の原因のうち実は9%は治療可能な病気です。割合としては少ないのですが、たとえ10人に1人であっても、できる限り早く原因を見つけることには大きな意義があります。やはりおかしいなと思われたら、早期に専門医の受診が望まれます。

 ところで認知症は何科が診るのでしょうか?一般的には私の専門である神経内科もしくは精神科が見ることが多いようです。しかし、その中でも得意・不得意があるようです。ホームページや評判等で担当医師が専門であるか否かを調べられることをお薦めします。

 認知症が専門である医師の数は少なく、神経内科専門医でさえ全国で5千名程度しかいません。当院に半径100km圏内から患者さんが集まっているのも、これが一因かと思われます。

認知症の4大原因疾患

 先回、認知症の原因としてアルツハイマー型認知症と血管性認知症の2疾患をご紹介しました。

最近では、認知症状、パーキンソン症状と幻覚症が主な症状であるレビー小体病が頻度として3番目になっています。一見、パーキンソン病のようですが本来保持される認知機能と高次機能が障害される点が特徴です。

さらに頻度として4番目が無頓着で破廉恥な性格変化から始まるピック病(≒前頭側頭型認知症)です。認知機能が保持された段階から反社会的な行動が出現します。警察沙汰になることも珍しくありません。これらの疾患は、社会福祉士の国家試験等にも出題されており、一般的にも認知症の原因疾患として4種類を知っておくことが望ましいと思われます

認知症の原因

 認知症というと1つの病気のような印象をもたれがちですが、実はさまざまな病気が認知症を引き起こします。その中の代表疾患がアルツハイマー型認知症です。認知症の約50%以上を占めます。

次いで30%前後を脳血管障害後遺症による、血管性認知症が占めます。以前は、日本では血管性認知症が多いと言われていましたが、最近は減少傾向です。アルツハイマー型認知症と血管性認知症が頻度的に1位と2位であり、両者で8割近くを占めています。最近は他にも多くの原因が見つかり、数えただけでも50種類以上の原因があるといわれています。