アミロイドβが認知症の原因…とは断言できない理由と溜めない方法

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The beta amyloid peptid, amyloid plaques, Alzheimer disease

認知症の原因について調べ始めると「アミロイドβ(ベータ)」という言葉を知ることが多いと思います。(βアミロイドということもあります)

この脳内物質が変性するとアルツハイマー型認知症を引き起こすのではないか、との仮説が現在主流の考え方です。実際に研究者レベルでは、アルツハイマー病は、アミロイドβが脳内で凝集し沈着することが原因と考えています。

平成30年2月、各新聞のトップを飾った記事がありました。

国立長寿医療研究センターと島津製作所は、アルツハイマー病の原因となる物質を血液中から90%程度の精度で検出する技術を確立した。島津製作所の田中耕一シニアフェローがノーベル賞を受賞した質量分析技術で調べる。脳内に原因物質が異常に蓄積されているか否かが早い段階で分かり、治療薬や予防薬開発につながる。英科学誌「ネイチャー(電子版)」に20182月1日、掲載される。』

これは脳内にあるアミロイドβを簡単な血液検査でわかる時代がそこまできたということです。信頼される雑誌ネイチャーに掲載されるほどですから、大きなニュースになったようです。

しかし、私はアミロイドβの量がわかったところで認知症の予防と改善には即繋がらないと思います。

今回は、月に1000人の認知症患者さんを診察している認知症専門医の長谷川がその理由とアミロイドβとの付き合い方をご紹介します。

1.アミロイドβとは

20世紀の初め、ドイツの医学者アルツハイマー博士は、生前に妄想や記憶障害のあった女性の脳組織を顕微鏡で調べ、脳の萎縮や、脳内のシミのような物(老人斑・ろうじんはん)、脳神経の中に糸くずのようなもつれ(神経原線維変化・しんけいげんせんいへんか)を発見しました。

その後、この特徴を示す病気を単なる「老人性の物忘れ」と明確に区別できるものであるとして、「アルツハイマー型認知症」と呼ぶようになったのです。

アミロイドβは、アルツハイマー型認知症に見られる老人斑の大部分を構成しているたんぱく質で、健康な人の脳にも存在し、通常は脳内のゴミとして短期間で分解され排出されます。しかし、正常なアミロイドβよりも大きく異常なたんぱく質ができてしまうと、排出されずに蓄積されてしまうのです。蓄積した変性型のアミロイドβプラークは、脳細胞を死滅させると考えられています。記憶の主体である脳細胞が死滅することで物忘れが起こると考えられているのです。

amiroidplaque

プラークが老人斑のもととなります

2.認知機能の低下と老人斑の多さが一致しないという矛盾

しかし、老人斑が多いあるからといって認知症になるわけではありません。

私は以前勤務していた病院で多くの認知症患者さんの剖検(ぼうけん・病理解剖のこと)に立ち会いました。そして、脳を取り出し病理標本を作製し、病理医に最終診断をゆだねていました。そこでいつも不思議に思っていたことがありました。

アミロイドβから構成されている老人斑は、アルツハイマー型認知症にも、正常な高齢者にも認められました。病理の先生が自分に「患者さんは生前、認知症の症状はありましたか?」と聞かれるので、神経内科医として「認知症の症状がありました」と答えると最終病名は「アルツハイマー型認知症」と診断されました。一方、同じ質問に対して「認知症の症状はありませんでした」と答えると、最終病名は「加齢に伴う老人性変化」となるのです。

実際に、病理所見を比較しても、老人斑の数は「アルツハイマー型認知症」と「加齢に伴う老人性変化」に差がないこともありました。ときには、認知症症状のなかった「加齢に伴う老人性変化」の方が老人斑の数が多いことさえあったのです。

つまり、認知機能の低下と老人斑の数は一致しないのです。

operating room from patient view

筆者は実際に何人もの方の脳を見てきました

3.認知機能の低下と脳萎縮の程度が一致しない矛盾

認知症の原因は何でしょうか。現在はアミロイドβが関与しているという仮説が、最も有力とされています。このアミロイドβ仮説では、「アミロイドβの毒性により、傷ついた神経細胞が次々と死んでいくことにより、脳が委縮し認知症を発症する」としています。

これについても臨床で日々多くの矛盾を感じています。認知症の患者さんの脳萎縮の程度は、臨床症状とあまり関係がないのです。はっきり言えば、「萎縮があっても正常な患者さん」もいますし、「萎縮がなくても認知症の症状がある患者さん」もいらっしゃるのです。

つまり、認知機能の低下と脳萎縮の程度が一致しないのです。アミロイドβだけにとらわれると認知症そのものを把握できないのではないかと実感しています。

4.なぜ認知症の新薬開発がうまくいかないのか

現在の認知症新薬開発も主流は、このアミロイドβ仮説に基づいています。しかし残念ながら、有力な新薬の開発には至っていません。認知症を日々診察している者からすると、研究者がアミロイドβの蓄積やそれに伴う脳の萎縮だけを認知症の前提として研究していることが、大きな間違いではないかと考えてしまいます。

研究に、戦略と戦術という言葉は似合わないかもしれません。しかし、研究の大きな戦略が間違っていれば、戦術でカバーすることはできません。今回の国立長寿医療研究センターと島津製作所による成果も「優れた戦術の一つでしかないのでは?」と疑問を持っています。

5.アルツハイマー病の予防は食事と睡眠と運動で

私自身は、アミロイドβの蓄積は一つの結果に過ぎないと考えています。しかし、アミロイドβは加齢でも蓄積しますから蓄積しない方がよいのです。そこで、アミロイドβの蓄積も、認知症も予防するための生活習慣をご紹介します。

近年の多くの研究から、アルツハイマー病につながる予兆が、発症の10年~20年以上も前からみられることが分かり、軽度認知障害のような早い段階なら予防や改善が可能だと考えられるようになってきています。ですので皆さん、積極的に予防に取り組んでいただきたいのです。特に効果的とされているのが、「食事と睡眠と運動」です。

5-1.認知症を予防する食事

例えば、カレーには認知症予防の効果があります。この効果は、黄色をしたカレーに含まれているウコン(ターメリック)によるものです。同じカレーでも、別の色をしたグリーンカレーやレッドカレーにはウコンが含まれていないため、認知症予防の効果はありません。

ウコンには「クルクミン」というポリフェノールの一種が含まれています。クルクミンは、アミロイドβの脳内蓄積を減らします。さらにクルクミンは、老人斑を分解します。その結果、認知症予防につながるのです。カレーを頻繁に食べるインドでは、圧倒的に認知症の発症確率が低いことも知られています。

その他にもお勧めの食材を紹介します。

2015年、ラッシュ大学医療センター(アメリカ・シカゴ)の研究でアルツハイマー病を予防する食事法が発表されました。これは、積極的に取るといい食材を10項目、なるべく控えた方がいい食材を5項目に分けたもので、目安となる頻度も合わせて紹介されています。

約1000人のお年寄りを平均5年間追跡した結果、全15項目のうち9項目以上を達成できていた人は、5項目以下だった人たちに比べアルツハイマー病の発症が53%も低いという結果が出ました。

【積極的に取る(かっこ内は程度)とよい食材】

  • 緑黄色野菜(週6日以上)
  • その他の野菜(一日1回以上)
  • ナッツ類(週5回以上)
  • ベリー類(週2回以上)
  • 豆類(週3回以上)
  • 全粒穀物(一日に3回以上)
  • 魚(なるべく多く)
  • 鶏肉(週2回以上)
  • オリーブオイル(優先して使う)
  • ワイン(一日グラス1杯まで)
  • カレー:

【控えた方(かっこ内程度)がよい食材】

  • 赤身の肉(週4回以下)
  • バター(なるべく少なく)
  • チーズ(週1回以下)
  • お菓子(週5回以下)
  • ファストフード(週1回以下)

アメリカ人対象の研究結果ですが、日本の方も参考になると思います。

Vegetable salad

健康的な食生活は脳にも良い作用をもたらします

5-2.睡眠時間は脳にとって大事な“クリーニングタイム

食事と並んで、アルツハイマー病の予防に効果があると考えられているのが、睡眠です。

私たちは睡眠中、脳も休んでいると思いがちです。たしかに日中と比較すると脳の活動量は低下しますが、全面休業というわけではなく、必要な栄養素を取り込んだり、不要な記憶を整理するなど、さまざまな活動をしていることが知られています。

そうした睡眠中の脳の活動の一つに、老廃物の排出があります。日中の活動で生じた老廃物を、脳脊髄液が循環して回収していますが、同時に不要なアミロイドβも回収・排出されています。アミロイドβはアルツハイマー病の原因物質の一つなので、睡眠不足などの影響で脳脊髄液の循環機能が低下すると、アミロイドβが増えて蓄積しやすくなると推定されています。

ただし、昼寝の場合は、睡眠時間が30分以上になると逆効果になるので注意が必要です。

5-3.予防に有効な4つの運動

運動は体のみならず脳にも好影響を与えます。

運動をすると、アミロイドβを分解する酵素が活性化され、アミロイドβの蓄積を防ぐとする報告があります。また、運動をすることで筋肉細胞から放出されるホルモンが、脳の細胞死を抑制する神経栄養因子を増やし、海馬の神経細胞の活性化や神経伝達機能を向上させるとの報告もみられます。さらに、運動が体内の酸化ストレスを減少させ、同時にインスリン分解酵素を活性化させて、タンパク質のリン酸化や蓄積を防ぐ効果があることも指摘されています。

ちなみに運動の種類としては、ウォーキングや軽いジョギング、サイクリングやエアロバイク(自転車こぎ)などの有酸素運動がお勧めです。頻度も、強い運動を週1回やるよりも、30分程度の運動を週3~4回程度おこなうことが大切です。

ちなみに、長谷川が開発したブレイングボード®は、認知症に効果があるとされる四つの運動「有酸素運動」「筋力トレーニング」「柔軟性」「バランス運動」を同時に行うことができるものです。

ブレイングボード®の動画は以下でご覧ください。

製品は8,640円(税・送料込み)にてお買い求めいただけます。

6.まとめ

  • 簡単に測定できるようになったアミロイドβは認知症の原因でなく、結果である可能性があります。
  • ただし、アミロイドβは加齢でも蓄積するので、蓄積を予防するに越したことはありません
  • 認知症予防には、運動・睡眠・食事が重要です。
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