風邪で病院に来るな!医師が伝える感冒薬の意味とおすすめ自宅治療法

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American doctor talking to worried mother

「ノドが痛い」「鼻水が出る」「寒気がする」…。風邪かもしれませんね。

私が2000年4月に開業したときに驚いたことがあります。「風邪で病院にかかる人」が実に多いことです。外来での「どうされましたか?」の質問に対して、患者さんは「ノドが痛い、咳が出る、熱っぽい、痰が出る」などと訴えます。

医師としてそのお悩みに応えるために診察し、処方箋をお出ししますが、内心では「この程度で受診?」と思うことも多く、ときには「病院に来てしまったことでかえって別の病気をもらってしまうのでは?」と思うことさえあります。

最近では、日本人全体で「自分で考え・判断する能力」が低下してきたのか、何も考えずにとにかく医療機関に受診する傾向が強いようです。確かに病院で処方してくれる薬は市販薬より効果的と思われているかもしれません。早目に受診することで他の病気の可能性を排除できるという考え方もあるでしょう。

しかし、社会保障費には限りがあります。様子観察していれば自然に治る「風邪」に無駄な医療費をかけている場合ではありません。

結論からいえば、平成三十年になっても風邪に有効な治療薬はないのです。病院で処方する感冒薬も全て「今あるつらい諸症状を緩和する」だけのものでしかありません。

また認知症の患者さんには特に総合感冒薬の処方を避けるべき理由があります。

今回の記事では、風邪に対する正しい知識をお伝えし、無駄な医療費を使わずに済み、さらに身体にも優しい治療法をご紹介したいと思います。

1.風邪とは、抗生剤が効かないウイルスが原因

ほとんどの⾵邪は、「ウイルスがノドにある上気道に感染して急性炎症を起こした状態」を言います。ですのでウイルスを退治すれば風邪が治ると考えることができます。しかし現在の感冒薬では、ウイルスを退治することができません。

1-1.抗生剤が効くのは細菌感染

病院には抗生剤があるじゃないか、よく効く抗生剤を処方してくれ」と思われるかもしれませんが、抗生剤が効くのは、あくまで細菌感染です。

しかし、細菌感染は外来受診する患者さんの1〜2割程度と言われています。つまり残りの8〜9割の患者さんは抗生剤の効かないウイルスが原因なのです。

1-2.細菌性を疑う症状

基本的には、風邪で医療機関を受診する必要がないのですが、以下の場合は、受診を考えましょう。

  • 喉の痛みが強く、鏡で喉を見て、牛乳のカスのようなものがついている場合(膿がついている可能性があります)
  • 39度前後の発熱が3日以上続く場合
  • 舌に赤い斑点が出る場合
  • 熱が38〜39度から37度前後に上がったり下がったりを繰り返す場合
  • 耳の痛み、聴力低下を伴う場合
上記以外は、「普通の風邪」の可能性が高くなります。

【ウイルスと細菌の違い】

細菌 ウイルス
大きさ 1/100〜1/1000mm 細菌の1/10〜1/100
構造 単細胞 遺伝子+たんぱく質の殻
増え方 自己増殖 寄生し栄養を得て増植
抗生物質 効く 効かない
代表例 大腸菌、赤痢菌、
コレラ菌、サルモネラ菌
インフルエンザウイルス、
アデノウイルス、ノロウイルス、
肝炎ウイルス、HIVウイルス
Bacteria

細菌のイメージ

virus-image

ウイルスのイメージと代表例

2.⾵邪の主な症状はなぜ現れるか

⾵邪の症状は非常に多く存在します。しかし多くは身体が自然治癒力で治そうとしているために起きているものです。

2-1.発熱

熱を出すことで、ウイルスを殺そうとしているのです。基本的には、無理に熱を下げる必要はありません。

2-2.くしゃみ・鼻水

鼻腔を洗い流すために出ているのです。薬は不要です。出て来る鼻水はティッシュペーパーでかめば良いのです。

2-3.のどの痛み

自然治癒力によって、ウイルスに対抗するために炎症が起きているのです。ここであえて、解熱鎮痛剤を使用すると、治るまでの期間が長くなるのです。但し、咽頭に膿がついている場合は、細菌感染が疑われますので病院を受診なさってください。

2-4.咳・痰

咳も異物を身体の外に出そうとしている現象の一つです。症状が治まれば、自然に収まります。

ちなみに、1回の咳で、およそ2kcal消費するといわれています。 たった2kcalと思われるかもしれませんが、1分間に2回、ゴホンゴホン! とせき込むペースが1時間続くと、240kcal消費されますので、身体への負担は結構あります。逆にこのことをお伝えすると、「嬉しそう?」な表情をされる方もいらっしゃいます。

ところで、受診される患者さんが、「痰」と言っている殆どは、鼻汁が喉に流れたものを言っています。痰とは、気管支炎や肺炎の際に気管支の奥からあふれてくるものを言います。わかり易いのは喫煙者が、咳とともに出しているものが、典型的な「痰」です。

2-5.倦怠感

これは、「身体を休ませなさい」という信号です。素直にしたがって、身体を休めましょう。

3.風邪の治療方法とは

以上お話ししたように、風邪の8割の原因であるウイルス性感冒に対して根本的に治すことはできません。ただし、細菌感染の場合やインフルエンザウイルスの場合は、根本治療が可能です。

3-1.一般的なウイルス性感冒については栄養と休息

いわゆるウイルスによる風邪症状の緩和を訴えられる場合は、その症状を抑える「対象療法」となります。

その際の柱となるのが「総合感冒薬」です。総合感冒薬とは、頭痛・発熱・のどの痛み・筋肉の痛み・咳・くしゃみ・鼻水・鼻づまりを緩和するのために解熱鎮痛剤と咳止め・去痰薬・抗ヒスタミン剤などを複合した医薬品です。

これだけでは対処できない場合に、さらに単剤として解熱解熱剤、咳止め、去痰剤等を加えます。しかし、あくまで根本療法ではなく対処療法であることをご理解ください。

感冒薬を使わずとも人間の自然治癒力に従えば必ず治るのです。

3-2.細菌感染による風邪は病院で抗生剤の投与

高熱が出ている場合、当院では至急の血液検査を行います。その際に、白血球、血液像、CRP(体内で炎症や組織細胞の破壊などが起こると血液中で増加する数値。症状の程度に比例して数値が上昇するため、炎症や感染症の指標として用いられる)を確認します。

これらの数値が高値の場合は、細菌感染を疑い、積極的に抗生剤を投与します。経過が長引いている場合は、外来でも点滴で抗生剤を投与します。

3-3.インフルエンザは専用治療薬で。自宅でも隔離を。

風邪とインフルエンザは全く違うものです。「風邪ぐらいで会社を休むな、しかしインフルエンザでは会社に来るな」というほどの違いです。インフルエンザウイルスは、感染力が強く、他の健康な人に感染するので、出勤・出校は禁止。自宅でも隔離が必要です。

現在は、外来でキットによる検査で診断が可能です。ここで検査が陽性であれば間違いなくインフルエンザとして、抗インフルエンザ薬を使用します。その際、解熱剤は禁忌ですから、頑張って熱が下がるまで耐えましょう。

ただし、外来のキットで陰性でも偽陰性があるから注意が必要です。偽陰性とは、インフルエンザであるが、検査が陰性として出ることです。症状等から、インフルエンザが強く疑われる場合は、インフルエンザとして治療・対応する場合もあります。

Mother calling doctor and looking at thermometer

インフルエンザは感染後48時間で増殖のピークを迎えます。ここまでに治療を行うと効果的です。

3-4.風邪に注射は効きません

風邪を引くと、「病院に行って注射でも打ってもらおう」と思う人がいるようです。これは間違った知識です。私が以前に新聞に投書した記事を紹介します。

開業をして驚いたことがある。風邪で受診した患者さんが注射を希望されることである。以前勤務していた大学病院や総合病院ではそのような治療は全く行われていなかった。どうも開業医に特有なものらしい。調べてみると、風邪の注射には3種類あるようだ。一つは、ビタミン剤の注射。これは風邪に対する適応はない。二つ目は抗生剤の注射。これも経口薬で取れる場合は適応外である。3つ目は解熱鎮痛剤の注射。これは多くの副作用が報告されている。使用に際しては警告文書がでており、風邪に対する適応はない。つまり多くの開業医で行われている注射はいずれも適応のない、一部は危険なものでもある。開業医は安易な注射は慎むべきであるし、患者さんも風邪に効果がある注射はないことを知るべきである。

つまり、風邪に効く注射などはないのです。

3-5.要注意!・・認知症患者さんへの総合感冒薬

認知症患者さんへの総合感冒薬には注意が必要です。総合感冒薬には、鼻水を止めるために抗ヒスタミン剤が含まれています。抗ヒスタミン剤には眠気を誘発する作用があるため、結構な頻度で混乱、せん妄、徘徊といった副作用が現れます。具体的には、意識がもうろうとしたり、大声で騒いだり、夜間にウロウロ歩き続けるといった症状が現れます。

先日も、近医で総合感冒薬を処方された認知症患者さんが、一晩中大声を出して歩き回ったといって受診されました。家族からは、症状を抑制するような薬を希望されましたが、とにかく総合感冒薬の服薬を中止するようお願いしました。薬が処方されないことに、ご家族は不安気でした。しかし結果は、中止した夜から落ち着かれました。

総合感冒薬は、認知症を理解されていない医師からは、極めて普通に処方されます(ちなみに薬品名としてはPL顆粒やPA錠というものです)。もちろん一般の人が服薬するには、まったく問題ありません。しかし認知症のご家族の方には、ぜひ知っておいていただきたい知識なのです。

4.長谷川流!自宅での風邪治療方法

先生は風邪をひきませんね」とよく言われます。確かに患者さんを診察していてもほとんど風邪をひきません。「実は、医師にだけ許された秘密の薬があるんです」というのは嘘です。長谷川が実践する「自宅でできる風邪治療方法」をご紹介します。

4-1.葛根湯

「風邪かどうかはっきりしないが何かおかしい」と感じた時に、早めに服薬するととても効果があります。葛根湯自体は、肩こりや筋肉の緊張を和らげ効果があるため、服薬するととてもよく眠れます。私の子供たちも効果を知っており、我が家ではもっとも消費量の多い薬です。

4-2.マッサージ

風邪をひくと、筋肉痛や全身の血行が悪くなります。そんな時には、自宅のマッサージ機に乗ると、不思議と身体が楽になり、よく眠れ症状が改善されます。

4-3.無水カフェイン

風邪気味でもどうしても仕事を休めない時があります。倦怠感が強く、眠気も出てきたようなときは、コンビニでも売っている栄養ドリンクが効果があります。その際は、内容成分を確認して「無水カフェイン」が50㎎以上含まれているものを選びましょう。

飲むと眠気が取れ、倦怠感が改善されます。いろいろな成分が含まれていますが効いているのは無水カフェインだけです。但し、あくまで対処療法ですから仕事が終われば十分に休んでください。

5.病院受診をする際のめやす

基本的には、風邪で病院に受診する必要はありません。しかし重篤な症状の可能性がある場合は早目に受診しましょう。

5-1.まずは6〜8時間様子を見てから。緊急外来は避ける

成人であれば38度以上の高熱でも、夜間に緊急受診する必要はありません。そもそも、風邪で緊急受診するケースがイメージできません。あえて言えば、風邪をきっかけにした喘息発作、インフルエンザの診断後に意識障害が出現し脳炎が疑われる場合は緊急受診しましょう。

皆さんが、緊急受診するべき?と思われたら、まず6〜8時間は様子を見ましょう。これで大部分は症状は改善するものです。改善しなければ、日中の医療機関を受診しましょう。夜間の救急外来はあくまで生死にかかわる患者さんのためのものなのです。

5-2.内科と耳鼻科どちらに受診する?

最近は、風邪で耳鼻科を受診される方が増えています。そのため、どちらに受診するか迷われるのではないでしょうか? 結論は、そもそも風邪程度では病院にいく必要はないのですから「どちらでもよい」です。

但し、風邪と思ったら、肺結核や肺癌といったこともあります。個人的には、全身を診る内科受診がお勧めです。

6.これからの風邪治療

今後、社会保障が厳しくなると風邪の治療にも制限が加わるかもしれません。私なりに予想してみます。

6-1.風邪薬は保険診療外へ

海外では風邪薬を医師の処方なしで薬局で買えるようにしています。というよりは、保険医療では処方が出来なくなっています。近い将来、日本でも風邪で医師にかかっても薬が出せなくなるでしょう。医療費の肥大はますます深刻になっていきますから、この流れは間違いないと思われます。

6-2.抗生剤の使用適正化が進む

これはとても正しいことです。しかし、外来では強く「抗生剤の処方」を希望する患者さんがいらっしゃいます。そのため現場にだけは任せられなくなったのか以下の報道がされました

政府は、2020年までに、「抗生物質」などの使用量を、3分の2に削減することを目標とすることを決めた。抗生物質が効かない細菌は「薬剤耐性菌」と呼ばれ、抗生物質などを必要以上に服用することなどにより、体内で「薬が効かない細菌」が発生する。「薬剤耐性菌」により、世界で、すでに70万人が死亡したとされていることから、政府は、2020年までに、人が服用する「抗生物質」などの使用量を、現在の3分の2に減らすことを目標とした行動計画を策定し、来週にも閣議決定される見通し。

抗生剤は万能薬ではなく、不必要な使用によって「本当に効いて欲しいときに効かない」薬剤耐性菌を生み出すことになります。皆さんにおかれましても正しい知識を得て広めていただければと思います。

7.まとめ

  • 風邪程度では病院に受診する必要はありません。
  • 抗生剤は万能薬ではありません。
  • 風邪かな?と思ったら市販の葛根湯、マッサージ、無水カフェインの含まれた栄養ドリンクも効果的です。
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