片頭痛でお悩みの方へ・専門医が解説!二大頭痛の判別法と薬の使い方

片頭痛でお悩みの方へ・専門医が解説!二大頭痛の判別法と薬の使い方

頭が重くなり、ジンジン…。鈍い痛みだったりギューッと締め付けられる感覚…。

いつもの頭痛ですよね。市販薬をいろいろ試しても効果が感じられない方もいらっしゃると思います。

何度も繰り返す頭痛に、病院の治療や薬ならもっと効果的ではないか、再発が減るのではないかと考えられるでしょう。

では、頭痛は何科を受診すればよいでしょうか? 実は頭痛の診断・治療に最も長けているのは、私が専門としている神経内科医です。頭痛の程度にもいろいろあり、市販薬で効果がある方もいらっしゃいます。しかし、神経内科外来では「市販薬が効かない」レベルの方が大部分です。

その中には、患者さん自身が「片頭痛なんです」と言って受診される方が結構いらっしゃいます。しかし、純粋に片頭痛のみの患者さんは一割程度でしょう。多くの患者さんは、緊張性頭痛もしくは、片頭痛と緊張性頭痛が併発しているのです。さらに頭痛は種類によって、効果のある薬が異なります。最も効果的な対処方法は、頭痛を最も良く理解している患者さん自身が、頭痛の性状によって薬を使い分けることです。

今回の記事では、神経内科専門医の長谷川が、患者さん自身で診断・対応するための頭痛の正しい知識をご紹介します。

1.頭痛薬の効果がなかなか感じられない理由

頭痛を主訴として神経内科の外来を受診される患者さんには、市販薬や専門外の医師から頭痛薬の効果がないために、受診される方がたくさんいらっしゃいます。ではなぜ頭痛の薬が効果がないのでしょうか?

1-1.そもそも市販薬の効果は弱い

医師が処方した薬に比べると、市販薬の薬はもともと薬の量が少なく設定されています。市販薬は誰でも購入することができます。なかには、一回一錠と書いてあっても、10錠飲んでしまう方がいらっしゃいます。それでも命を失うことがにないように、量自体を少なく、作用(副作用を含む)も抑えられたものが認可されているのです。

もちろん、医師が処方する薬や、スイッチOTC医薬品(もともと医療用として使用されていた医薬品を有効成分や服用方法、用量が全く同じまま市販されている医薬品)は指示された容量を守ってください。10倍も服薬したら、それこそ大事になります。

1-2.頭痛は種類によって治療方法が異なる

大部分の頭痛は、頭蓋骨の周りにある、筋肉、血管、神経による痛みが原因です。そして、それぞれに対して効果のある薬は異なります。例えば、専門外の先生が、血管や筋肉が原因の頭痛に対して漠然と鎮痛剤を処方しても効果はありません。

1-3.患者さん自身の頭痛が混在している

仮に、医師が頭痛の種類に応じた適切な処方をしても、患者さん自身の頭痛の種類が混在していることが多いのです。つまり、日によって頭痛のタイプが異なるのです。そのため、患者さんと医師がよく相談をしたうえで、頭痛の性状によって薬を使い分けることが重要です。

2.混同されやすい二大頭痛

よく起こる頭痛には2種類あります。頭痛=片頭痛だと思っているかもしれませんが、「片頭痛」のみ発症している方は1割程度です。

2−1.片頭痛の特徴

血管性頭痛の代表格です。脳内の血管が広がり、血管に絡みつく三叉神経が刺激を受けることで痛みが起きます。痛みの程度は激烈で、この片頭痛には市販薬は効きません。若い女性が中心で、遺伝性があります。小学生高学年になると発症しやすくなります。不思議と、ついてきたお母さんが「私も昔はひどかったんです」と言われます。つまり、年とともに頻度も性状も軽くなるのです。

三叉神経
三叉神経の位置。出典:慶應義塾大学病院 KOMPASS

2−2.緊張性頭痛の特徴

筋肉性の頭痛の代表格です。肩こりの延長で引き起こされます。したがって、夕方に仕事や勉強に疲れたときに起きます。市販薬もある程度効果がありますが、散歩やマッサージも効果があります。目の疲れから、引き起こされることも結構あります。視力のチェックも忘れないようにしましょう。

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目の疲れや肩こりが頭痛を引き起こすことが少なくありません

2−3.併発している方がほとんど

教科書的には、二大頭痛は明確に分かれて記載されていますが、実際は日によって、片頭痛であったり筋緊張性頭痛であったり、混在することが大部分です。まず筋緊張性頭痛が起こり、その後片頭痛を誘発することもあります。

3.二大頭痛の鑑別診断方法

それぞれの頭痛の違いについて解説します。

片頭痛 筋緊張性頭痛
持続時間 ときどき起こる。
(間欠的)
持続する。
部位 頭の片側に起こることが多い。 頭の両側か頭全体、後頭部が痛む。
性状 ズキンズキンと脈を打つような強い痛み。 ギューッと締めつけられるような痛み、重苦しい鈍痛。
随伴症状 吐き気や嘔吐(おうと)、あるいは光や音臭いが気になる、という症状を伴う。 肩こりやふわふわしためまいを伴うことがある。
仕事の可否 時々寝込むほど痛み、仕事はできない。 仕事はできる程度の痛み

4.治療方法・・・片頭痛に効果的なトリプタン製剤とは

典型的な片頭痛は、遺伝性のある若い女性が、前駆症状(閃輝暗点)の後、突然ズキンズキンとした症状を呈します。頭痛は激烈で、通常は仕事も手につかないほどです。もちろん、市販薬は全く効果がありません。片頭痛に対してはトリプタン製剤を有効に使う必要があります。

*閃輝暗点:片頭痛の前兆として、視界にかげろうのような空間の揺らぎ、チカチカ、ギラギラした刺々しい光などが現れる症状


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4-1.トリプタン製剤の作用機序

トリプタン系薬剤は、主に3つの作用があり、片頭痛の痛みを引き起こす根源の「血管」と「三叉神経」の両方に作用します。脳の血管に作用して、拡がりすぎた脳の血管を元に戻し、また、三叉神経からの神経ペプチドの放出を抑え込みます。さらに、三叉神経が受けた刺激の情報が大脳に伝達されるのをブロックすることで、片頭痛だけでなく、吐き気や嘔吐、光過敏・音過敏などの症状も抑えます。

4-2.トリプタン製剤の服用のタイミング

トリプタン系薬剤は、服用のタイミングが大事です。頭痛が始まり、それが片頭痛の痛みであると確信した「軽度」のうちに服用すると高い効果が得られます。しかし、片頭痛がひどくなってからでは薬剤の効果が十分には発揮されません。

4-3.トリプタン製剤の種類・剤形

現在、日本で使用できるトリプタン系薬剤は5種類(商品名でイミグラン、ゾーミック、レルパックス、マクサルト、アマージ®)です。タイミングを逃さずに服薬できるように、その剤形には、錠剤だけでなく、口腔内速溶/崩壊錠、点鼻薬、注射薬があります。

4-4.トリプタン製剤は効果があるが高価

なお、トリプタン製剤の薬価(薬の価格)は、内服薬であれば1錠の薬価が900円前後です。片頭痛の患者さんは若いので、医療費は3割負担です。つまり一錠300円近くするのです。しかし、効果は抜群なため、「喫茶店でコーヒーを一杯飲むつもりで服用する」と言われる患者さんもいらっしゃいます。

5.治療方法・・緊張性頭痛の場合は

緊張性頭痛は、頭の周りを何かで締めつけられるような鈍い痛みが30分~7日間続きます。よく「ヘルメットをかぶったような」と表現されます。また、肩や首の強いこり、めまい、ふらつき、全身のだるさなどを伴うこともあります。子どもから高齢者まで、どの年齢層でもみられます。

5-1.薬よりも運動やマッサージ

血行を良くしたり筋肉を動かすことで改善される可能性が高いです。緊張性頭痛が起こったときには、散歩・スポーツで適度に体を動かすことが有効です。マッサージや入浴によって血行を促すことも有効です。

5-2.鎮痛剤の効果は?

緊張型頭痛は、鎮痛薬を使用してもあまり効果はありません。にもかかわらず、痛いからといって毎日のように鎮痛薬を飲むことにより薬物乱用頭痛を起こすことがあるので、注意が必要です。

*薬物乱用頭痛:ひどい頭痛を経験すると、頭痛発作への不安から鎮痛薬を予防的に服用するようになり、飲む回数や量が増えていきます。すると次第に、脳が痛みに敏感になり、頭痛の回数が増え、薬も効きにくくなってくるという悪循環に陥ってしまうのです。

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痛み止めを飲み続けていると、徐々に効きめを感じにくくなる可能性があります

5-3.カフェイン

緊張性頭痛に有効なものにカフェインがあります。実際に、医師が処方するSG配合顆粒には無水カフェインが50 mg含まれています。正直、薬品成分の作用よりもカフェインの鎮痛効果のほうが高いのではないかと感じています。

私自身も、夕方に疲れがたまって頭重感があるときにSG配合顆粒を服薬すると、頭がすっきりして仕事に専念できます。もちろん緊張性頭痛は、「少し休みなさい」という信号ですから、あくまで薬は一時的に使用するものと考えてください。日頃から筋肉が過度に緊張しないように、自分に合ったリラックス方法を見つけ習慣化することが大切です。

実は、病院でSG配合顆粒を処方してもらえる時間もない人におすすめなのが、栄養ドリンクです。リポビタンDなどの多くの栄養ドリンクには、SG配合顆粒と同じ無水カフェインが50 mg含まれています。疲れがたまって頭が重いときには試す価値があるといえます。

ただし、カフェイン量が過剰な製品には注意してください。例えば、モンスターエナジーには144㎎、ロックスターで120㎎、レッドブルには80㎎のカフェインが含まれています。緊張性頭痛には、カフェインは50㎎で十分です。

カフェインの過剰摂取は、「中枢神経系の刺激によるめまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠症、下痢、吐き気など」の副作用があります。死亡例も報告されていますので気を付けましょう。もちろん、一日一本50㎎程度のカフェイン摂取は全く問題ありません。

6.併発の場合

基本的な、治療方法をご紹介してきました。現実には、片頭痛と緊張性頭痛はこれほど明確には分かれていません。疲れがたまって、片頭痛が誘発されたときなどは、専門医でもどちらの治療をするかは悩むところです。

そんなときは、診断的治療がお勧めです。つまり、頭痛が起こったときに、トリプタン製剤とSG配合顆粒のどちらかを服用するのです。結果、トリプタン製剤が効果がれば片頭痛、SG配合顆粒が効果があれば緊張性頭痛と診断します。もちろん30分~1時間たっても効果がなければ、もう一方を服薬します。

これを繰り返していくと、徐々に患者さん自身で正しい判断ができるようになってきます。その結果、受診時に「今回は、トリプタン製剤を多めにお願いします」や「今回はSG配合顆粒だけで十分です」などと、自分に合った処方を希望できるようになるのです。

鎮痛剤についても患者さんの好みがあり、SG配合顆粒が効果的な人もあれば、市販もされているロキソニンが効果的な方もあります。この点も、患者さん自身が自覚され、「私はSG顆粒よりもロキソニンでお願いします」と自身にあった処方を希望されるようになるとよいでしょう。

7.まとめ

  • 二大頭痛は片頭痛と緊張性頭痛です。
  • それぞれに対しての治療法は全く異なります。
  • 現実には両者が混合していることが多いので、診断的治療を繰り返していくうちに患者さん自身が判断して薬を選択できるようになります。
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