グループホーム選びの最も重要なポイントが「看取り」である理由

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Senior couple in wheelchair in autumn nature.

軽度認知症の方が集団で生活するのがグループホームです。

そこで入所者の方の体調が悪化するとどうなると思いますか?  もちろん急激に悪化する場合も徐々に悪化する場合もあります。

そのうちに医学的に「余命がわずか」と判断される状況は誰にも訪れます。入院ですか? 今の病院は長く入院させておくことができません。ではどうすればいいのでしょうか?

ご家族が施設を選択する場合、まずは費用や施設の充実度に目がいきがちです。場合によっては、「空いていればどこでも」という気持ちで選択することさえありますしかし、看取りを行ってくれないグループホームに入居すると、悲惨な経過をたどることがあります。

今回の記事では、認知症専門医として自身でもグループホームを経営している長谷川が、「看取りをしてもらえるグループホームを選択する」ことの重要性をお伝えします。ご家族だけでなく、この記事を読んだグループホームの多くが、看取りに取り組んでもらえるようになれば嬉しいことです。

1.グループホームではどこまで看てくれる?

グループホームとは、認知症の症状を持ち、病気や障害で生活に困難を抱えた高齢者が、専門スタッフの援助を受けながら共同生活する施設です。グループホームでは入所者は、介護スタッフのサポートを受けながら、5〜9人のユニット単位で共同生活を送り、認知症の進行を緩やかにすることを目的としています。

当初、グループホーム(認知症対応型共同生活介護)は比較的手のかからない65歳以上で要支援2以上の介護認定を受けた認知症患者さん」を対象としていました

しかし、入居者の高齢化や重度化が進んでいるために、看取りできない施設の存在が深刻な問題となっています。実際、看取りを行うグループホームの割合は50%程度しかないのです。

そして、これらの施設では、「身体状態が悪化し、一人で着替え・食事摂取・排泄などができなくなったり、慢性疾患のために日常的な医療ケアが必要になったりした場合は退去をお願いします」と説明されていることが多いのです。

2.グループホームから退去させられたらどこへ?

簡単に「日常的な医療ケアが必要になったので退去をお願いします」と言われても、次の施設を探すことは大変です。もちろん、グループホームに入居しなければならない状況だったわけですから自宅に帰ることはそもそも不可能でしょう。

2-1.特別養護老人ホーム

患者さんが、徐々に日常生活動作が悪化した場合は、その都度介護度を上げ、介護度3以上になった時点で、特別養護老人ホーム(特養)の申し込みをします。そうすると、申し込みからだいたい1〜2年経った時点で特養に入所することができます。この流れに乗れれば、最後は特養で看取ってもらえることも可能となります。

では特養に入るまでの期間はどうすればいいのでしょう。

2-2.病院で入院

すべての患者さんが徐々に悪化するわけではありません。介護度2程度の利用者さんで、突然状態が悪くなり身体介護や医療ケアが必要になることも多いのです。この場合は、まずは病院を受診します。入院して改善すればそのままグループホームに戻ることができますが、高齢である患者さんは、改善しないことも多々あります。

2-3.病院でも対応に困る認知症患者さん

実は、簡単に病院と言っても、認知症患者さんはそもそも入院・治療できないことが多いのです。徘徊や介護抵抗が強ければ、そもそも入院もできません。仮に入院ができても黙って点滴をして安静を保つことは不可能です。そうなると、入院さえも受けてもらえなくなるのです。

3.途方に暮れる認知症患者さんとご家族

以下の状態になって、「グループホームではこれ以上は看られない」と言われるとご家族は本当に困ってしまいます。

  • 急激に悪化して生活すべてに介助を要する全介護状態
  • 食事量も不安定で、全身の衰弱が激しい
  • 入院を試みるも認知症の症状がひどくて安静治療ができない

在宅医療に取り組む認知症専門医の立場としてはこの時点では、「グループホームで看取ること」が最善の方法です。しかし、ここで施設側から看取りができないと言われると悲惨です。

Doctors running for the surgery

逼迫した状況で救急搬送、なんとか一命は取り留め、胃ろうを増設。さてその後は?

この状態で、引き受けてくれる施設はありません。考えてみれば当たり前です。最後の最後の大変なところだけを看てくれる施設は存在しないのです。結局、さらに悪くなった状態で病院に救急受診。病院側も長期入院はできませんから、胃ろうを作って療養型病床群や民間病院に送ります。これらの施設は療養環境としては不満足な点が多く、この段階で後悔されるご家族が多くいらっしゃるのです。

*胃ろうのメリットデメリットについては以下の記事で詳しくお伝えしています。

胃ろうのメリットデメリット・後悔しない7つのポイントを医師が解説

つまり、グループホームの施設が看取りをしてくれるか否かで、安らかな最期を迎えられるか、胃ろうなどの管がつながれた末の悲惨な最期になるかの違いが生じるのです。

4.看取りをしてくれるグループホームを知る方法

入所前にその施設が看取りをしてくれるか否を確認しましょう。正直、看取りをしている施設は、一言「看取りは過去にもしています」と答えてくれます。一方、はっきりとイエスともノーとも言わない施設は注意しましょう。それ以外の看取りをするか否かを知る方法をご紹介します。

4-1.協力医が在宅医療をしているか

施設側がどれだけ看取りをしたくても、協力医が在宅医療をしていないと看取りはできません。しかし、グループホームの場合は協力医=主治医である必要はありません。協力医以外で在宅医療に取り組んでいる医師を主治医にすることが可能です。実際、当院が協力医でない施設で看取りを行うことは結構あるのです。

4-2.看取り加算と医療連携加算を算定しているか?

国もグループホームが重度化した入所者にきちんと対応ができるように2006年の介護報酬制度の改定で「医療連携体制加算」を新設しました。さらに、2009年には「看取り介護加算」が新設され、この加算を取得している施設では基本的に看取りに対応してくれると考えてよいです。

看取り加算は、入居者本人及び家族の意向を尊重しつつ看取りの体制を構築し、看取りに向けた手厚い介護の実施を図ることを目的に導入された加算です。医師が医学的見地に基づき「回復の見込みがない」と診断した入居者に限り算定が可能となります

医療連携加算はグループホーム従業員または他医療機関、訪問看護ステーションに在籍する看護師と連携し、24時間連絡体制を確保している場合に加算されるものです。

4-3.大手のグループホームは融通が効かない傾向にある

看取りは、ご家族と施設と医療機関が同意すればいつでも実施が可能です。現在、当院では八カ所のグループホームの協力医をしています。そのうちの2か所は当初、看取りを行っていませんでしたが、当院の働きかけで、現在は看取りに取り組んでくれています。

しかし、大手の場合は、本部の許可がいるようで現場サイドが看取りをしたくても対応できないケースがあります。全国にチェーン展開しているグループホームは特に注意が必要です。

5.グループホームでの素敵な最期

グループホームで看取ることができた例を紹介します。

これは当初、看取りをしていなかったグループホームの利用者さんのケースです。グループホームには三年前から入所。周辺症状が悪化。協力医が認知症専門医でなかったたため一か月前から当院が主治医になりました。その後急激に全身状態が悪化。地域の基幹病院に搬送されるも、過去に入院した際に、徘徊・介護抵抗が強かったため入院拒否。結果、グループホームに戻ることになりました。当初は、経営者が「看取り」に対して抵抗があったのですが、入院できない状態ということでなんとか看取りの許可をいただきました。

患者さんは、それから一週間後にとても安らかにお亡くなりになりました。長年、患者さんの認知症に苦しんだご家族は安らかな最期にとても喜んでいただきました。それと同時に、自分達の施設で看取りができたことに、介護職員の方がとても喜ばれました。看取りの場面で、家族と同じ、なかにはそれ以上に涙を流されている職員には感動しました。あとで聞いたところによると、非番の職員もたくさん集まってくれていたそうです。

Doctor pronouncing death of patient

慣れた環境で亡くなることが利用者さんにとっても最も安らかな最期を迎えられるのです

6.提言「施設経営者は積極的に看取りの態勢をつくろう」

年々、現場では加算に関係なく医療処置や看取りへの対応をすることになってきました。この原動力は、「長年看させいただいた利用者さんに、施設で安らかに最期を迎えてもらいたい」という現場の気持ちです。多くの介護関係者は、正直なところ看取りは不安です。しかし、それ以上に「安らかな最期」をという使命感で頑張ってくれるのです。

そのためにもグループホームの経営者は、在宅医療に対応してくれる医療機関や訪問看護ステーションと連携するよう尽力しましょう。これからの時代、看取りをしないグループホームは選ばれなくなるのでしょう。

7.まとめ

  • 看取りをしないグループホームを選んではいけません。
  • グループホームでの看取りは、本当に安らかで感動的です。
  • 多くの施設経営者には積極的に看取り体制に取り組んでもらいたいものです。
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