しゃっくりを脳神経内科医が解説!原因と治療法、病院にかかる目安も

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気がついたらヒック……またヒック。しゃっくりでお困りですね。多くは短時間(30分〜数時間)でおさまるでしょう。しかし中には病院にかかる必要がある方もいます。

しゃっくりで病院? と思われるかもしれません。しかし、中には48時間以上、ときには1か月以上の続くもののあります。その際の患者さんの肉体的・精神的苦痛は多大です。そんな時に病院を受診しようと思っても、何科に受診すればよいか迷うものです。実は、しゃっくりを専門とする科は、私が専門とする脳神経内科です。今回の記事では脳神経内科医の長谷川嘉哉がしゃっくりの全貌をお伝えします。

1.今すぐしゃっくりを止める、医師オススメの方法

まずは、今すぐしゃっくりを止めたいという方への物理的方法をご紹介します。ただし、これは明確な医学的な根拠があるわけではありませんが、現実に効果があるものをピックアップしました。それぞれに合うものを選択してみてください。

1-1.コップの水を向こうから飲む

これは、私が親から教えてもらい、実行している方法です。通常は手前で飲むコップの水を、向こう側から飲むという方法です。具体的には、コップに水を8割ほど入れます。手に持ち前屈みになりながらコップも同様に傾けます。コップの水を向こうの縁から飲みます。上あごをつたって水が胃に入る感覚です。飲む水の量は少しで大丈夫です。私にはとても効果があります。

医師として理屈を考えると、横隔膜を通常より引き上げることで、戻る時にリセットされることが要因と思われます。ただし、鼻や気管支に水が入ってむせることがありますから注意してください。

1-2.舌をハンカチの上から両手で掴み、前方に30秒間強くひっぱる

これは、医師の中では比較的知られた、患者さんに行う方法です(しゃっくりが止まらない方に実際に外来で行う場合があります)。患者さんの舌をハンカチの上から両手で掴み、前方に30秒間強くひっぱるというものです。ちょっと痛いですが、かなり効果的です。もちろん、自分自身で同じように行っても、効果があります。

医学的に説明すると、舌をひっぱることで、舌咽神経を刺激して、しゃっくりの原因となっている横隔膜の動きを正常化させるという原理です。

1-3.舌咽神経を刺激するその他の方法

上記の2つで、8割がたのしゃっくりは改善します。基本は、舌咽神経を刺激すると効果があるようです。上記以外では、

  • 氷を口に入れて上顎に舌で押し付ける
  • 耳の穴に指を入れて強く押す

も試してみてください。

2,しゃっくりとは

しゃっくりとは、正式医学疾患名は『吃逆(きつぎゃく)』といいます。横隔神経や迷走神経、呼吸中枢が刺激され、横隔膜が不随意運動することで起こります。横隔膜とは、胸とお腹のしきりの役目をしていて、呼吸をする際には収縮して息を吸い込めるよう働いています。しゃっくりが起こる時、横隔膜は急速に収縮して胸壁を腹部側に引っ張り、胸腔の容積が増えるため胸腔内圧が低下し、肺に急速に空気を吸い込むようになり、同時に声帯が素早く閉じて「ヒック」というような音を発します。これがしゃっくりです。

Human Body Organs Diaphragm Anatomy

横隔膜。肺の下にあって呼吸に大きく関わる体幹の深層筋です

3.しゃっくりの種類

しゃっくりは持続時間で以下のように分けられます。

3-1.48時間以内に治るもの

48時間以内に自然に軽快するものを良性吃逆発作といいます。殆どのしゃっくりは何の対処をしなくともしばらくすれば治りますので、これに属します。

3-2.48時間以上続くもの

ごくまれに48時間以上続くこともあります。この場合も3~4日目に自然に治るかもしれませんが、根本的な病気の可能性もあるので、医学的評価が必要です。なお、48時間から1か月以内のものを持続性吃逆。1か月を超えるものを難治性吃逆といいます。

4.しゃっくりの原因

原因により中枢性と末梢性に分けられます。

4-1.中枢性

中枢性は、延髄に起こった脳梗塞や脳腫瘍などの中枢神経系の病気アルコール中毒や睡眠薬の服用が原因で起こります。私の外来では、脳梗塞や脳出血の後遺症の方が持続性・難治性のしゃっくりを訴えることが最も多いです。原因としては、迷走神経が延髄の呼吸中枢を刺激して、しゃっくりを引き起こすとされています。

4-2.末梢性

末梢性は、迷走神経および横隔神経あるいは横隔膜そのものが直接刺激されて起こる場合であります。

迷走神経や横隔神経を直接刺激するものとしては、脳底部の腫瘤、頚の疾患(頸椎症、頚部腫瘤、頚部リンパ節腫脹など)、胸の疾患(肺炎、胸膜炎、肺癌、気管支喘息など)などがあります。

横隔膜を刺激するものとしては、肝疾患、腸閉塞や胃腸炎など消化管が拡張したり消化管の運動が亢進するような疾患、腹部の手術などがあります。

ただし最も多いのは、暴飲暴食や急な食事による横隔膜の刺激です。

5.しゃっくりで困っている場合の病院は何科?

脳神経内科医は、けいれん発作や、不随意運動を専門としています。そのため、横隔膜の不随意運動であるしゃっくりも脳神経内科医が専門となります。そのため総合病院などの受付で、しゃっくりが止まらないと訴えると、脳神経内科の受診となります。

6.薬物療法

すぐにしゃくりを止める方法が効果がない場合は、以下の薬物治療を行います。症状に合わせた薬を選択しますが、改善しなければ変更もしくは併用することで治療します。私の経験では、物理的療法で治らなくても、薬物治療までおこなえば殆ど改善します。

6-1.クロルプロマジン(商品名:コントミンもしくはウィンタミン)

商品名は、コントミンもしくはウィンタミンとして知られています。しゃっくりに対して、保険適応がされています。ただし、多くは統合失調症に使用される薬ですので、私は最初には選択しません

6-2.クロナゼパム(商品名:リボトリールもしくはランドセン)

クロナゼパムは、抗てんかん薬、筋弛緩薬です。脳神経内科医がよくみる四肢の付随運動であるミオクローヌスに有効な薬です。そのため、横隔膜の不随意運動であるしゃっくりには、末梢性・中枢性いずれにも効果を示します。

6-3.メトクロプラミド(商品名:プリンペラン)

メトクロプラミドは、腸管の平滑筋収縮の抑制を解除し、蠕動運動を促して消化管機能を改善します。食べ過ぎ、飲みすぎが原因と考えられる末梢性のしゃっくりの場合は、メトクロプラミドを使用します。

6-4.バクロフェン(商品名:リオレサール、ギャバロン)

延髄レベルの抑制因子する因子にGABAという神経伝達物資があります。GABA作動薬のバクロフェンを使用することでしゃくりを抑えます。脳血管障害による中枢性のしゃっくりで持続性・難治性の場合には有効です。

6-5.漢方薬

しゃっくりぐらいで、飲み薬に抵抗がある患者さんもいらっしゃいます。そんな時は、漢方薬を使用します。漢方薬では芍薬甘草湯((しゃくやくかんぞうとう)がよく用いられます。

ただし、昔から柿のへたを煎じたものにも優れた効果があるといわれています。本格的には、柿のへた20個を200mlの水で約100mlになるまで煎じます。これはあまりに大変なので、柿のへたを含む漢方薬の柿蒂湯(シテイトウ)エキス製剤を用いてもよいでしょう。これはしゃっくりを適応として薬局で市販されています。

7.まとめ

  • しゃっくりに困った場合は、まずは紹介した物理的対応をしましょう。
  • ただし、48時間以上持続する場合は、医師、特に脳神経内科医を受診しましょう。
  • 薬物治療は、しゃっくりの原因等を考え使い分けます。
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