医療費&障害者控除・介護の負担を減らし税金の戻りを得る6つの知識

医療費&障害者控除・介護の負担を減らし税金の戻りを得る6つの知識

多くの皆さんが、年間けっこうな金額の診療費、医薬品の購入費、介護保険等の自己負担をされているのではないでしょうか? 一人一人では額が少なくても、家族単位で考えると結構な額です。これらの費用は年末調整や確定申告時に所得から差し引くことで税金から控除することができます。

この控除可能なものは、意外なものが知られていないという事実があります。税金は支払う側が正しい知識を知っておくことで、正当なルールの元に自分の負担を減らすことができます。

今回は、ファイナンシャルプランナー資格を持つ認知症専門医である長谷川が忘れがちで効果が大きいものを中心にご紹介します。

1.最も有効 介護認定の方は障害者控除を忘れないで

Senior Caretaker
介護認定されると障害者控除が受けられることはあまり知られていません

多くの税金控除の中で、最もメリットが大きい情報です。新聞に投稿した記事を紹介します。実際、私が中日新聞にこの投稿をした後に、数人のご家族から数十万円単位で税金が戻った報告を受けています。また、私の外来でも、多くの方に紹介して喜んでいただいています。

確定申告時の障害者控除についてはよく知られている。納税者自身、または控除対象配偶者や扶養親族が障害者に当てはまる場合には、一定の金額所得控除を受けることができる。 この対象者が身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳を持っている人たちだけだと勘違いされているようだ。

実は、介護保険の認定で「要支援から要介護2までの方」は障害者控除(27万円)を、それ以上の「要介護3からの方」は特別障害者の控除(40万円)が受けられる。 しかし、この控除を受けるためには、市町村に「障害者控除対象者認定書交付願」を提出する必要がある。対象者は相当多いと思われるが、外来などでもこのことを知らない方がかなり多いようだ。

つまり、障害者には「65歳以上の方で障害の程度が障害者に準ずるものとして市町村の認定を受けている方など」が含まれていて、「要介護者は障害者に準ずる」のです。最近では、多くの市町村のホームページで障害者控除対象者認定書交付願はダウンロード可能となっています。

私は、外来、講演、本、新聞投稿でも何度も情報提供していますが、相変わらず「知る人だけが知っている」という状態です。

世帯の所得によりますが税率が30%で介護度4であれば、特別障害者控除の40万円に相当する12万円の税金が控除され戻ってきます。ちなみに、5年間遡れますから、場合によっては60万円が戻ってくることもあるのです。

2.医療費控除とは

その年の1月1日から12月31日までの間に自己又は生計を一にする人のために医療費を支払った場合には、一定の金額の所得控除を受けることができます。これを医療費控除といいます。

2-1.医療費控除の金額

医療費控除は、自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合には、10万を超えた分で最高で200万までが所得から控除されます。例えば、入院をして医療費を30万円を支払ったとします。生命保険などから入院給付金等が支給されなかったとすると、30万円-10万円=20万円が医療費控除の対象となります。

この20万円が還付されるわけではなく、所得税率を掛けたものが還付されます。所得税率が20%であれば4万円が還付されます。最高税率の40%であれば8万円が還付されます。

つまり高額所得者であれば、結構な額が還付されるのです。お金持ちの高齢者が、気前よく一本30万円のインプラントを何本も入れていることも理解できます。

2-2.総所得金額等が年200万円未満の人は

医療費控除には「その年の総所得金額等が年200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額」という条件があります。具体的な数字で示しますと、「年収311万6000円未満のサラリーマン」であれば、医療費が年10万円にいかなくても、医療費控除は受けられる、ということです。

Male physiotherapist giving leg massage to patient
医療費は、75歳以上で1割負担、70歳以上で2割負担があります。少額だからといって軽視しないことが大切です

3.医療費控除の対象は目的が「治療」であるかがポイント

控除の対象となる医療費は、目的が「治療」であるかがポイントです。健康保険が適用されるか否かは問題ではありません。治療を目的とした自由診療や先進医療も、一般的に支出される水準を著しく超えなければ、医療費控除の対象となります。

3-1.医療費控除の対象

  • 子どもの成長を阻害しないように行う歯列矯正
  • 治療目的で行われる大人の歯列矯正、高額なインプラントも対象となります
  • 視力回復を目的とした治療であるレーシック手術
  • 市販薬:治療目的の医薬品であれば対象となります。例えば、風邪をひいて薬局で風邪薬を購入した、腰痛治療のために湿布薬を購入した場合などが医療費控除の対象となります。

3-2.医療費控除の対象外

  • 美容目的で行われる歯列矯正
  • 眼科で処方されるメガネやコンタクトレンズ:視力を回復させる治療ではありませんので、医療費控除の対象になりません
  • 市販薬:治療目的ではない車酔い予防の薬やサプリメントなどは、予防や健康増進を目的とするため対象となりません。

3-3.迷ったら、出してみる?

正直、医師としても歯列矯正の治療目的と美容目的の線引き、その他の治療と予防の違いの厳密な線引きは難しいものです。医師でさえ迷うものを税務署が判断できるのかという疑問も生じます。

このような事情を考えると、迷ったらダメもとで出してしまうのも一案かもしれません。当然認められないことはあります。但し、あくまでも自己責任でお願いします。

4.介護保険サービスも医療費控除の対象に

医療費控除の対象に、介護保険サービスも入っているということはあまり知られていないのではないでしょうか? 居宅系サービスの中でも医療度の高いサービスは保険の自己負担に限り医療費控除の対象となります。


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4-1.医療度の高いサービス

具体的には 以下のものになります。

  • 訪問看護
  • 訪問リハビリテーション
  • 居宅療養管理指導【医師等による管理・指導】
  • 通所リハビリテーション【医療機関でのデイケア】
  • 短期入所療養介護【ショートステイ】

4-2.医療度の高いサービスを併せて利用する場合のみ、医療費控除となるサービス

医療度の高いサービスを併せて利用する場合のみ、医療費控除となるサービスがあります。

具体的には、

  • 訪問介護【ホームヘルプサービス】(調理、選択、掃除等の家事の援助などの生活援助中心型を除く)
  • 訪問入浴介護
  • 通所介護【デイサービス】
  • 短期入所生活介護【ショートステイ】 などです。

つまり、同じデイサービスやショートステイを使っていても医療度の高いサービスを併用しているか否かで    医療費控除になったりならなかったりするので分かりにくくなっています。

4-3.確定申告時に間違って提出したらどうなる?

当然、認められません。しかし医療系サービスを使っていないにもかかわらず、デイサービスの領収書を提出して通ってしまった方もいるようです。ルール違反になるのでお勧めはできません。

しかし前章と同様にご自身で線引きが分からない方が多いと思います。介護サービスを使っている方は、医療費控除として通るか担当者と相談されたらいかがでしょうか? もちろん自己責任でお願いします。

5.おむつ証明書を忘れない

年末になると当院では、「おむつ証明書をお願いします。」という言葉が飛び交います。おむつ代が医療費控除の対象として認められるからです。

控除を受けるには、レシートや領収書を取っておくだけではいけません。必ず担当の医師から「おむつ使用証明書」を出してもらうことが必須条件です。発行に伴い厳しい検査があるような難しい証明書ではありません。診察前にお願いすれば帰りの受付で受け取れる書類です。

ただし、おむつにかかる費用は多くても月額1万円弱。年間で10万円程度です。したがって、おむつ代だけでは、10万円の医療費控除を超えることはあまりありません。医療費、薬局で支払った薬代、介護保険の自己負担などと合わせて使うことになります。

特に、当院では、おむつ証明書を依頼された場合は、必ず最初にご紹介した介護認定での障害者控除のご案内をするようにしています。おむつ代の10万円の医旅費控除に比べ、障害者控除の27万円、特別障害者控除の40万円の方がはるかにお得だからです。

6.交通費も控除対象

医療費控除の対象となる医療費には、診療費・治療費や医薬品の購入費のほか、通院や入院のための交通費、電車やバスの移動が困難な場合のタクシー代などがあります。

所得税法基本通達73-3では「医師等による診療等を受けるための通院費若しくは医師等の送迎費、入院若しくは入所の対価として支払う部屋代、食事代等の費用又は医療用器具等の購入、賃借若しくは使用のための費用で、通常必要なもの」という内容になっています。

この通達を受けて、自家用車のガソリン代や駐車料金などは医療費控除に該当する医療費とはなりませんが、公共交通機関を使用した場合の通院費などは医療費控除に該当するのです。

ただし医療費控除を受ける場合、手続きとしては医療費の領収を証する書類の添付が必要となるため、公共交通機関を使用した場合の通院費に関して、「領収書がない」と思う人も少なくないでしょう。
この場合は、内訳を別途作りましょう。医療費の明細書に記入する際は、領収書1枚ごとに個別に転記する必要はなく、まとめて転記することもできます。公共交通機関を使用した場合の通院費など、領収書のとれない医療費については通院履歴などと照合できるように整理するとよいでしょう。

7.まとめ

  • 税額控除で、最も有効な知識は、介護認定でも障害者控除を受けられることです。
  • 医療費控除は、健康保険が適用されるか否かでなく、目的が「治療」であるかがポイントです。
  • 医療費控除の対象には、介護保険サービスも入っています。
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