転ばぬ先の杖 - 認知症専門医 長谷川嘉哉のブログ

認知症専門医師 長谷川嘉哉 ドクターズブレイン 長谷川嘉哉

1日1.5ℓの唾液は凄い

投稿日:2017年8月9日

皆さん、唾液は1日どれ程の量が分泌されるかご存知ですか?
この量は、1日1.5リットルになります。
当たり前に分泌されている唾液ですが
実は、多くの働きがあります。
いくつかご紹介します。

① 風邪などの細菌が体に入らないように守る働き
口は外から多くの細菌が入ってきます。
唾液中の抗菌物質であるリゾチームやラクトフェリンによって
細菌が体の中に入り込まないように殺菌しています。
同時に、口の中の細菌がバランス良く保てるように管理もしています。
② 食べ物を消化する働き
唾液に含まれる酵素によって食べ物を消化する働きがあります。
食事の時よく噛み、食べ物に唾液を多く絡ませることによって、
食べ物の栄養素をよく吸収でき、
胃腸の負担を軽くすることができます。
したがって、胃腸が弱っているときはお粥を食べるよりは
普通のご飯をいつもよりしっかり唾液をまぶした方が効果的です。
③ 溶かされた歯を元に戻す働き
唾液の中にはリン酸やカルシウムなど歯には欠かせない
多くのミネラル成分が含まれています。
歯は食事のたびに溶かされミネラル成分が流れ出ます。
唾液によってミネラル成分が歯に戻される再石灰化が起こります。
④ 虫歯菌が出す酸を中和する働き
口の中は食後、虫歯菌が出した酸によって酸性となります。
口の中が酸性のままだと歯が溶けつづけてしまいます。
唾液の働きによって口の中を酸性から中性に戻し、
歯が溶けることを食い止めます。
唾液が中性に戻す働きが強いほど虫歯になりにくくなります。
⑤ 味を感じさせる働き
舌には味蕾という味を感じる細胞があります。
唾液で食べ物が分解され、舌の味蕾細胞に多くの味の成分が浸透します。
よく噛んで唾液を絡ませると、食べ物の本来の味を感じ取ることができます。

以上のように、万能の働きを持つ唾液ですが、
あまり噛まない人は、半分程度しか分泌されないようです。
しっかり嚙んで
しっかり唾液を分泌するためにも
歯医者には、痛くなってから出かけるのでなく
定期的なメンテナンス受診に心がけたいものです。

唾液の効果.jpg

カテゴリー:健康

一噛み3.5ml 

投稿日:2017年8月7日

認知症専門医として噛むことは相当に重要です。
なんと、1回噛むごとに3.5mlの血液が脳に送り込まれるのです!
噛むことで脳への血管に圧力が加わり、血液が流入するのです。
さらに、口の周りにある口輪筋といわれる筋肉は、
顔の多くの筋肉と繋がっています。
口を動かせば、顔の筋肉を介して脳に刺激を与えてくれるのです。
ワーキングメモリーの中心である前頭前野や
記憶を司る海馬に影響を及ぼします。
噛まないと、海馬の神経細胞が死滅することが報告されているから驚きです。

このためでしょうか高齢者の歯の残存数と
認知症との関連性を見ることができます。
健康な人では平均14.9本の歯が残っていたのに対し、
認知症の疑いのある人では9.4本と明らかな差が見られます。
つまり、歯が少なくて噛むことができないと、
噛む回数も減り、認知症になりやすくなるということなのです。


そんな中、厚生労働省は以下の報告を
"2017年6月2日、歯科疾患実態調査の2016年調査分の概要を発表した。それによると2016年時点で「80歳で自分の歯が20本以上ある人(俗に「8020達成者」と呼ぶ)」は推定で50.2%に達したことが分かった。(ちなみに自分の歯が20本以上残っていれば、高齢者でも十分に硬いものを食べることができ、食生活をほぼ満喫できるとされている)これは前回調査2011年の推定値38.3%を大きく上回っている"

この報告書には、上昇理由について記載は無いのですが、
自分の歯が20本以上ある人が長生きをしてる証明でもあるのかもしれません。

噛んだ時の刺激(月).gif

カテゴリー:健康

理想の最期

投稿日:2017年8月4日

1000名以上の死に立ち会った経験から
理想の最期とは・・
食事が摂れなくなった場合
最低限の検査をして
食事が摂れなくなる医学的な原因がないことを確認。
その後、2-3日点滴を施行。
しかし、経口摂取は改善しない。
この場合は、患者さんは生命体として
死に向かっていることを意味します。

後は、口を湿らせる程度の水分を与えながら、
自宅もしくは、施設で最後を過ごします。
不思議と人間は、一滴の水分を取らなくても
直ぐに亡くなるわけではありません。
2週間以上生存される方もいらっしゃるのです。
しかし、最終的には
お亡くなりになることには間違いありません。
終末期の段階では、積極的な治療は行いません。
家族・身内も最期と感じ、
多くの方がお別れに訪れます。
久々に出会った知り合いの声に反応されることもあります、
人間は、最期の最期まで聴覚は維持されます。
尊厳をもった対応を忘れてはいけません。
やがて、最期は苦しむこともなく
穏やかに心・呼吸停止となり
お亡くなりになります。

無用な延命をしないご遺体は
本当に美しいものです。
こんな素敵な最期を
昭和30年代には、亡くなる方の90%近くの方は
普通に自宅で実現していたのです。
最近では、病院で亡くなる方が90%近く・・
結果として、不毛な治療の末
亡くなる方が増えてきたのです。
何しろ病院は治療するところです。
何もしないで自然に看取ることはできないのです・・
そのためにも
人生の最期の最期は、
病院以外で過ごしたいものです。

人生の最後(金).png

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食事がとれなくなったら最期

投稿日:2017年8月2日

高齢の患者さんが食事が摂れなくなると
『どうして食事がとれないんですか?!』と
強く質問されるご家族がいらっしゃいます。
そんな時は、
『人間は最後は食事が摂れなくなり、お亡くなりになります』と説明します。
そんな当たり前の説明で
納得されるご家族もいらっしゃいますが、
どうしても、どうしても
感情的に納得できない御家族もいらっしゃいます。

"何とか点滴だけは続けてほしい"と希望されるご家族も・・
しかし、点滴は水分しか含まれていません。
低栄養によって浮腫がひどくなるだけです。
さらに血管がもろいため、何度も刺しなおす・・
患者さんに苦痛を与え続けることになります。
それでも、点滴の継続を望まれる方には
「あなたの自己満足のために、患者さんに苦痛を与え続けても良いですか?」と
改めて問うこともあります。

90歳を超えた患者さんが食事をとれなくなった際でも
明確に、胃瘻作成目的での病院受診を希望される家族もいらっしゃいます。
"どんな形でも生きていてほしい??"という感情のようです。
最近では、働かない子供が親の老齢年金を当てにして
"胃瘻"による延命を希望される方さえいるのです・・
胃瘻による無理な延命・・
片足が腐っても生きていた患者さんもいらっしゃいました。
生命体としては亡くなっているのに
無理やり栄養を与えつづける・・
こんな悲惨な状態になる事さえあるのです。
(不思議と胃瘻を希望した方は、介護には関わりません!)

今回、日野原重明先生が
素晴らしい最期を
実践されました。
これからは終末期の説明で、
『日野原先生も、胃瘻をつくらずに自然にお亡くなりになりましたよ。』
と参考にしていただけそうです。
人間は、"食事がとれなくなったら最期"
多くの方が、
そんな当たり前のことを
当たり前に選択してほしいものです。

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生き方上手は、死に方上手

投稿日:2017年7月31日

聖路加国際病院名誉院長の日野原重明先生が、
105歳で平成29年7月18日にお亡くなりになりました。
18年前に本当にわずかですが、
日野原先生とNHKの全国ニュースでご一緒したことがあります。

開業前に勤務していた名古屋市厚生院で
音楽療法の前後でNK細胞の数と活性を測定。
その実験結果を、
「音楽療法によるナチュラルキラー細胞活性および細胞数の変化」として
日本老年病学会に投稿。
NHKの名古屋支局が取材。
最初に音楽療法の先生が方法論を話し、
自分が実験データを説明。
最後に、日野原先生から
『音楽療法の有効性を、科学的に証明した!』と
高評価をいただきました。
その結果、
名古屋支局のニュースだったのですが、
評判がよく
な~んと全国ネットで再び取り上げていただき
一躍、音楽療法の世界で有名になってしまいました。
日野原先生の影響力の大きさには驚いたものです。

当時は、学会が中心になって音楽療法の保険適応を目指していました。
国会議員さんも動いており、その際の根拠として
私の論文を取り上げていただきました。
残念ながら保険適応には至りませんでしたが・・

そんな日野原先生、
食事がとれなくなった段階で
胃瘻等の延命治療は拒否。
自然死を選択され、
素晴らしい最期を実現されました。
やはり、
"生き方上手"な日野原先生、
"死に方上手"でもありました。
改めて、ご冥福をお祈りします。

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