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2008年4月12日(土)岐阜新聞掲載

素描 認知症・社会的問題


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現在、急激な勢いで社会の高齢化が進んでいる。それに伴い認知症患者さんの数も増えている。一見正常であるが、前頭葉機能のみが低下している早期認知症の人も含めるとその数は莫大なものとなる。現実に問題となっている事例をいくつか紹介する。

まず、車の運転である。当院でも、認知症のかなり進んだ人が車を運転しているケースが見受けられる。できるだけ運転しないように指導するが、交通事 情を考慮すると強制はできない。しかし、あまりに危険なケースでは公安委員会に依頼する事もある。高齢者による高速道路の逆走やアクセルとブレーキの踏み 間違いなどは、認知機能障害を有している可能性が高い。

次に悪徳業者である。土岐市のようなのどかな町でも多くの人が騙されている。特に早期認知症や、認知症初期の人が危険である。内容が十分に理解でき なくても契約行為自体はできてしまう。悪徳業者は情報網を持っており、一度騙されると入れ替わりで騙されるケースも見受けられる。これは成年後見人制度を 利用して予防することが可能である。ただし、手続きは面倒である。少し費用を払ってでも専門家(弁護士、司法書士、行政書士等)に依頼されることをお薦め する。

最期に、高齢者が持つ資産の問題である。資産保有が高齢者に片寄っているため、世代間の資産格差が広がっている。高齢者の資産運用は保守的にならざ るを得ない。結果として有効利用が妨げられてしまう。資産の保全および有効利用のためにも認知症を理解した専門家集団による社会整備が必要と思われる。

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