え!こんな人も運転!?高齢者に免許返納してもらう方法を医師が解説

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Senior woman holding car key and smiling

悲惨な事故があとを絶ちません。ブレーキとアクセルの踏み間違い以外にも認知機能は正常の範囲なのに、別の病気で事故を起こしかねない人を多く見ています。

当院は認知症を専門としています。そのため、ご家族が高齢者の運転を心配して受診される方がたくさんいらっしゃいます。中には、かなり認知症が進行していて運転は極めて危険と思われるケースもあります。しかし、そんなケースに限って、本人は強く運転に固執します。「運転をしてはいけない旨」を説明しても、強く拒否をされます。時には、怒り出す方もいらっしゃいます。

今回の記事では、認知症専門医の長谷川嘉哉が、こんな怖い方が運転しているという実態と、対応方法をご紹介します。

1.家族が心配になるケースの実例

当院の認知症専門外来には、患者さんの運転を心配する切実な声が集まります。その一部をご紹介します。

1-1.車に傷をつけても気づかない

運転をしている患者さんの中には、車に多数の傷がついていても全く気が付いてない方がいらっしゃいます。家族が思わず、「この傷はどうしたの?」と質問しても、「知らん、自然についた」などと全く意味不明な回答をします。とても、知らないうちについたような小さい傷ではないなのです。そんな場合は、ご家族に、車の傷について写真をとっておくようにアドバイスしています。

1-2.孫も同乗を怖がる

中学生や高校生の孫が、「お爺ちゃん(お婆ちゃん)の運転は怖いから乗りたくない」と言われている患者さんも見えます。まだ免許を持っていないお孫さんが同乗しても、恐怖を覚えるような運転をしているのです。しかし、当人は全く自覚していません。

1-3.実際に事故を起こす

テレビの報道が、高齢者の交通事故のすべてではありません。私の患者さんでも、アクセルやブレーキを踏み間違える方は、何人もいらっしゃいます。当院の建物にも、アクセルとブレーキを踏み間違えてぶつかったケースがありました。外壁だけでなく、室内の壁までがへこんでしまうような勢いでしたが、本人は、「そんなに強く踏んでいないんだけど」とのこと。

その他にも、廃車になるほどの事故をしても、「大した事故ではなかった」と全く自覚がないので、より恐怖が募るものです。

Car crash accident on street with wreck and damaged automobiles. Accident caused by negligence And lack of ability to drive. Due to illness

事故を起こしても「大したことがない」などと言い張ります

2.認知症だけじゃない!こんな人も運転はしてはいけない

運転をしてはいけないのは、認知症患者さんだけではありません。

2-1.歩行もおぼつかない

事故が起こった時に、運転者が負傷者に対して行う措置は、法律で定められた義務です。道路交通法(72条1項)では「交通事故があったときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。」とされています。つまり、運転者には負傷者を救護するだけの運動能力が求められるのです。池袋で事故を起こした高齢者のように、両手で杖を使わないと歩けないようでは、法律上の義務を全うすることはできないのです。

2-2.殆ど耳が聞こえない

運転においては、聴力も重要です。外来などでは、通常の会話ではほとんど聞こえないため、耳元で大声をしゃべってようやく通じる患者さんも運転をしています。そういう方に限って補聴器も嫌がって使用されません。現在の免許取得には、「補聴器を使用して10mの距離で90デシベルの警音器の音が聞こえる」聴力が必要となります。しかし、90デシベルとは、「子供や女性が使う防犯ブザーの音」ですからかなりの音です。運転の際に周囲の音は重要な情報です。もう少し基準を厳しくして、免許の取得の際は、聴力検査の結果でも免許を遠慮いただきたいものです。

2-3.てんかん

最近の研究では、てんかんの発症は、高齢者で最も多いことが分かってきています。高齢者のてんかんは、けいれん等を伴わないことが多く、認知症などを併発することもあり、見過ごされやすいものです。発作症状としては不注意、無反応、健忘などのあいまいな症状で、周囲からは、意識を失った、もしくは意識障害が生じたと感じます。運転中に、このような状態にあれば間違いなく事故を起こすのです。高齢者や認知症患者さんのてんかんについては以下の記事も参考になさってください。

高齢者や認知症患者に多い「てんかん」を見逃さない!5つのポイント

3.運転をしてはいけない患者さんの特徴

全体に運転をしてはいけない患者さんには以下の特徴があります。

3-1.突発的判断ができない

運転には、前頭葉機能が深くかかわっています。前頭葉機能が低下すると、突発的な判断、論理的思考、理性のコントロールが障害されるため、運転はとても危険になります。普通の状態では運転はできても、突然アクセルとブレーキを踏み間違えたり、高速道路を逆走してしまうのです。

3-2.自信満々

運転に問題がない方ほど、自己を心配されて自ら免許を返納されます。現在の繰り返される高齢者の事故、さらに自分自身の加齢変化、周囲の心配を理屈で考えれば、自信満々で運転はできないものです。しかし、運転してはいけない人ほど、「俺は問題ない」と根拠のない自信を持たれます。

3-3.すぐ怒る

理性のコントロールができないため、家族が免許の返納をお願いしても、手が付けられないほどの勢いで怒ります。これは医師の前でも同様で、私の外来でも怒って診察室を出て行ってしまいます。理由に関わらず、急に怒ってしまうような人の運転は危険です。

Angry driver

怒りっぽいドライバーは危険です

4.対応方法

本当に困った場合は、どのように対応すればよいでしょうか?

4-1.まずは公安委員会に通報

まずは、家族や医師が免許返納を説得します。しかし、それでも全く応じてくれないことがあります。そのような場合は、公安委員会で書類をもらい、主治医に意見書を書いてもらいましょう。その際は、傷だらけになった車の写真も添付するとより効果的です。

4-2.公安委員会による対応

そうすると、公安委員会が電話・もしくは自宅を訪ねることで免許を強制的に取り上げてくれます。多くの場合は、さすがに納得されます。ただし、私の患者さんの一人は、訪ねてきた公安委員会の職員に、「俺の免許は渡さない!」とナタを振りまわしました。こうなると、自宅での生活は危険ですので、現在精神科に入院となっています。

4-3.医師と公安委員会が責任を分担

公安委員会がによる対応はとてもうまくできています。医師は診断書を作成しますが、最終判断は公安委員会です。一方で、公安委員会はあくまでも医師の診断書を参考にして最終判断します。

患者さんによっては、結果に不満を持たれて抗議することがあります。しかし、医師に抗議すれば、「最終判断は公安委員会です」と医師は逃げられます。一方で、公安委員会に抗議すれば、「医師の診断書を参考にしました」と公安委員会は逃げることができるのです。つまり、双方が責任を分担する仕組みになっているのです。

Japanese driver's license and certificate issued after return

返納に伴って発行される運転経歴証明書は顔写真入りの身分証明書になります

5.医師の皆さんへ、認知機能検査が正常でも運転の許可をしてはいけない

私の診察でも、前医が認知機能検査だけで運転を許可してしまい、家族がとても困ったケースがありました。家族は、傷だらけになった車の写真を医師に見せたのですが、認知機能検査だけで「運転は可能」と判断したのです。

運転免許については、認知機能検査が正常でも運動機能、聴力、前頭葉機能(突発的な判断、論理的思考、理性のコントロール)などを総合的に判断すべきです。もし運転を許可した患者さんが重大な事故を起こした場合は、医師にも責任が追及されることを肝に銘じるべきです。認知機能が保たれていても、危険がある場合は運転を許可しない決断をお願いします。

6.まとめ

  • 認知症・高齢者による交通事故が増えています。
  • しかし、認知症だけでなく、運動機能、聴力、前頭葉機能も運転においては重要です。
  • 運転の可否の判断には、認知機能だけなく総合的に判断する必要があります。
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