めまいは何科?不得意な病院を避け、適切な治療を受けるための全知識

めまいは何科?不得意な病院を避け、適切な治療を受けるための全知識

日常生活の中で、めまいを経験することは頭痛や腹痛などに比べると少ないものです。

頭痛や腹痛などは、結構経験しているため、自分自身で重症感がわかるものです。しかし、初めて経験するめまいは不安感が増し、より症状を強く感じてしまいます。

そのため一刻も早く受診しなければと思い、救急受診したり、大病院への受診を急いだりします。しかし、9割以上のめまいは心配が要らないものです。ゆっくりと症状が落ち着いてからめまいの専門医に受診をした方が、正しい診断・治療が受けられます。

また、めまいを得意としない病院はけっこう多いものです。正しい診断をせずに他の病名がついてしまったら患者さんのためになりません。ではそれを防ぐ知識とは?

今回は、神経内科の専門医として多くのめまい患者さんを診ている長谷川嘉哉がめまいについてお伝えします。

1.めまいが起きやすいタイミングとは

めまいを主訴に受診される患者さんのパターンは決まっています。起きやすいシーンは以下の3つです。

ちなみに、患者さんの多くは、めまいを「フワツク」、「浮遊感がある」、「ふらふらする」、「周りが回る」などと多彩な表現をされます。

1-1.朝起きたとき

朝起きた際に、めまいが出現します。もっとも多い状況です。そのため、起床時はいきなり起き上がるのではなく、いったん布団のなかで体を動かしてから、ゆっくり起き上がることがお勧めです。

1-2.夜トイレに行ったとき

夜、トイレに起きようとした際に、めまいが出現します。寝ている状態から、いきなり立ち上がることでめまいが誘発されます。特に、和室で布団ですと、寝ている状態から立ち上がった際の頭の位置の変化が大きくなり、めまいが誘発されるのです。予防のためには、ベッドの使用をお勧めしています。

1-3.下を向いたり、後ろを振り返ったとき

何らかの首の動きで、めまいが誘発されることが多いものです。下を向いたり、後ろを振り返ったり、首の動きでめまいが誘発されるのです。美容院など、椅子が倒された状態で洗髪するときも、めまいが誘発されることが多いです。

2.症状別「受診すべき科」とは

めまいを感じたら、まずは落ち着きましょう。そして、最初に「耳鳴り」「耳閉感」「難聴」といった聴覚症状の有無を確認しましょう。それによって診てもらう病院が異なります。

2-1.耳鼻科

耳鳴り、音が聞こえにくい、耳が詰まった感じがするときは、耳鼻科疾患が原因の可能性が高くなります。しかし初めて、めまいを経験すると動転して、正しい判断ができません。耳元で指を鳴らしてみてください。そこで、初めて難聴を自覚する患者さんもいらっしゃいます。

一般的に、耳鼻科領域のめまいは、周囲がグルグルまわる「回転性めまい」を訴えることが多いようです。以下に代表的な疾患をご紹介します。

  • 頭位変換性めまい:内耳の前庭と呼ばれる部位にある耳石が剥がれて三半規管に入り込むことでめまいが生じます。頭を動かすことで、めまいが生じます。
  • メニエル病:内耳性のめまい特有のぐるぐるする回転性のめまいの他に、耳の聞こえ方にも影響が出ます。メニエル病のめまいは20分以上続き、寝ていてるときも継続するため、次第に吐き気を感じるようになります。
  • 前庭神経炎:風邪やインフルエンザなどで体内に侵入したウイルスが前庭神経へ到達して炎症を起こすことがあります。平衡感覚などの情報伝達がうまくいかなくなるため、めまいが生じるようになります。
  • 突発性難聴:中耳炎など、聴神経に生じた炎症が原因です。突発性難聴ではぐるぐる回るようなめまいを起こすことがありますが、難聴に比べめまいは比較的軽いことが特徴です。

2-2.神経内科

めまいはあるが、耳の症状がはっきりしない場合は、神経内科を受診してください。耳以外で脳を中心とした原因を検査します。脳が原因のめまいというと大げさに聞こえますが、受診された90%以上の方は、それほど重篤な原因ではないのです。

ちなみに、最も多い原因は、脳の血流不全です。頭に流れる血管は左右前後に4本あります。そのうち後ろ側の2本を椎骨動脈と言い、頸椎の横突孔を下から上に貫通します。このような場所を走行しているため、首を動かすとこの動脈が圧迫されます。結果、めまいが誘発されるのです。

椎骨動脈
首の骨に走る椎骨動脈の血流が悪くなることでめまいが発生することがあります

神経内科ではめまいの患者さんがいらっしゃると、頭部のCTやMRIとともに頸部のXP写真を撮影します。患者さんにすると「めまいでなぜ首のXP?」と不思議がられます。これは、頚椎の変形がめまいの原因となっていることが多いからです。

最初にご紹介した、めまいを訴える状況としての「朝起きたとき」「夜トイレに行ったとき」「下を向いたり、後ろを振り返ったとき」はいずれも首の動きが関わっているのです。

2-3.上記以外は基本的には専門外

実は、多くの医師はめまいの診察が苦手です。そのため、正確な診断、説明がないため患者さんはより不安になってしまいます。

特に、めまいで受診すると「メニエル病」と診断される方が多いのですが、専門外の先生が診断した「メニエル病」はほとんど間違いです。


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ちなみに、メニエル病とは、「難聴、耳鳴り、耳が詰まる感じなどの聴覚症状を伴うめまい発作を反復する」と定義されます。ここで一番大切なのは「聴覚症状」を伴うことです。単なるめまい発作だけでは、メニエル病ではありません。

患者さんの立場とすれば、診察する医師が、めまいだけでなく、聴覚症状(耳鳴り、耳閉感、難聴)の有無を確認するかで、力量が図れます。聴覚症状の確認もせず、「メニエル病」と誤った診断をする先生が、結構(かなり)いるのです。

3.緊急性の高いめまい

9割以上のめまいは、軽症ですので、落ち着いてから耳鼻科もしくは神経内科の受診をお勧めします。しかし、以下の症状が伴う場合は、脳梗塞や脳出血の可能性が高くなります。緊急で受診をしてください。

  • ろれつが回らない
  • 激しい頭痛を伴っている
  • 麻痺が生じている

4.耳鼻科領域でも神経内科領域でもないめまいがある

臨床で多くのめまい患者さんを診ていると、耳鼻科領域でも神経内科領域でもないことがあります。耳鼻科的検査も、神経内科的に脳をくまなく検査しても異常がないが、めまいの症状は残るのです。この章ではそれらを解説します。

4-1.貧血

採血をしたら、単なる鉄欠乏性貧血であることもあります。鉄剤の補給で改善します。

4-2.失神発作

急に目の前がまっくらになる『眼前暗黒感』という症状があらわれることがあります。ひどくなると意識を失い、失神します。

意識を失うと周囲は驚きますが、失神発作は、横にして頭の位置を低くすると意識は戻ります。そのときに、意識の回復が悪い、胸部痛等と訴える場合は、すぐに救急受診しましょう。

●狭いトイレで失神してしまうことがある

高齢の方で、トイレのなかで座ったまま失神してしまうことがあります。倒れることができれば、すぐに意識は戻るのですが、狭いトイレではそれすらもできず意識を失っているのです。大抵は数分で意識を取り戻しますが、じゅうぶん注意なさってください。

4-3.肩こり

実は、これが最も多い原因だと感じることがあります。仕事が忙しく、睡眠不足、疲労、運動不足により身体・精神の緊張が高まっているのです。それにより、いつも身体がフワフワしたようなめまいが起きている。病院に行って、検査をしても異常がないのです。

このような場合は、「病気でない」ことを明確に説明して、まずは不安を取り除きます。そのうえで安静と適度な運動をお勧めすると改善することが多いものです。

5.治療

様子を見てもめまいが収まらない場合は、病院を受診しましょう。以下のような治療を行います。

5-1.7%炭酸水素ナトリウム注射液の静注あるいは点滴

本剤は内耳血流を増加させ、内耳虚血時の酸素分圧の低下を抑制することにより、めまいを抑制します。ただし、点滴後すぐに改善するわけでなく、数日かけて徐々に改善していくというものです。

5-2.メトクロプラミド静注

悪心嘔吐に対して、急性期では内服が困難であるため、鎮吐作用を示すメトクロプラミド静注を行います。

5-3.抗不安薬を筋注

不安が強い急性期のめまい患者には、ジアゼパムなどの抗不安薬を筋注します。抗不安薬は、前庭代償(ふらつきを覚える際に、脳が平衡感覚を調整する機能)の初期過程を促進することによる抗めまい作用も持つと考えられています。

6.日常生活での予防法とは

めまいは、日常生活でかなり予防することができます。

6-1.正しい生活習慣を

毎日の生活習慣の乱れが、めまいを引き起こすこともあります。めまいを感じたら、睡眠不足や食生活など、生活習慣についてもいま一度見直してみましょう。

6-2.首の動きに注意

めまいは、首の動きで誘発されることが多いものです。そのため、急に首を動かすことは避けましょう。急に起き上がる、急に首の向きを変えるなど気をつけるだけでもめまいの頻度は下がります。寝るときも、布団よりベッドの方がめまいを誘発することは少なくなります。

6-3.カイロプラクティックは避ける

肩こりやストレスがめまいを誘発することが多いものす。そのため、患者さんが楽になるのであれば、マッサージ、針、ヨガなどもお勧めです。ただし、カイロプラクティックだけは避けてもらっています。カイロプラクティックでの首への動きが、めまいを誘発することがあるからです。

7.まとめ

  • めまいを感じたら、まず落ち着いて、聴覚症状(耳鳴り、耳閉感、難聴)の有無を感じましょう。
  • 聴覚症状があれば耳鼻科、なければ神経内科を受診しましょう。
  • めまいに、ろれつが回らない、激しい頭痛、麻痺といった症状が合併する場合は緊急受診をしましょう。
  • めまい発作の軽減のためには、マッサージ、針、ヨガなどもお勧めです。ただし、カイロプラクティックは避けてください。
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