コロナ禍を機に、タバコを最も効果的にやめられる「禁煙外来」の治療方法を医師が解説

コロナ禍を機に、タバコを最も効果的にやめられる「禁煙外来」の治療方法を医師が解説

喫煙は、虚血性心疾患、最近では桂歌丸さんで有名になったCOPD(慢性閉塞性肺疾患)など多くの病気の原因となっていることが知られています。もちろん、喫煙者の多くの方は、そんなことは知っています。でもやめられないのです。多くの方が禁煙に挑戦しても失敗することには、それなりの理由があります。ですから、ただやみくもに根性だけで挑戦しても、武器も持たずに戦うようなものです。

そこで多くの禁煙方法が考案されていますが、医学的に裏付けされているのは「禁煙外来」(医師の診察をもとに禁煙していく方法)です。では禁煙外来では実際にどのようなことを行なっているのでしょうか。また効果のほどは? そこで今回の記事では、煙草をやめるための禁煙外来についてご紹介します。

1.禁煙は継続が難しい

煙草をやめるなんてとても簡単なことだ。私は百回以上も禁煙している」これは、『トム・ソーヤーの冒険』で有名な作家のマーク・トウェインが語った有名な言葉です。このように禁煙は始めるのは簡単ですが、継続するのは難しいと思われています。

Unidentified business men smoking in the smoking area
吸える場所を見つけてさまよい、また肩身の狭い思いをしている方が少なくありません

2.自力で成功する割合はわずか

喫煙は習慣性が高いため、自力で禁煙に成功する確率は20%しかないのです。

根性だけでチャレンジし、何日かは続くものの、あえなく敗退。しばらくするとまた禁煙しなければと思い立ち、やってみるけれども、また失敗。そんなことを何度もくり返しているという方も多いでしょう。実は、タバコ依存は身体的依存精神的依存の2つの要因からなっています。タバコを止めたいけど止められないというのは、単に自分の意志が弱いというわけでなく、『ニコチンの依存症』という病気なのです。

3.病気=タバコ は病院で治しましょう!!

禁煙補助薬は、「イライラする」「タバコを吸いたくてがまんできない」などの禁断症状を軽くします。また、禁煙成功率が2倍程度高まることもわかっています。禁煙外来ではニコチンを含まない飲み薬を使用します。

3-1.内服薬チャンピックスの登場

禁煙補助薬としてニコチンパッチを使用することがほとんどでしたが、これに代わる新たな禁煙治療経口補助薬「チャンピックス」が登場しました。チャンピックスを使用した患者の禁煙成功率は55.5%、ニコチンパッチを使用した患者の禁煙成功率は22.2%と言われていますので、禁煙外来の主流はチャンピックスになっています。

3-2.作用機序

通常、タバコを吸うことで、タバコの中のニコチンが脳の神経細胞にあるニコチン受容体に結合します。そのことで神経細胞の端末よりドパミンが放出され満足感などの快感が得られます。

  • チャンピックスを内服することで、タバコを吸ってもニコチンが脳の神経細胞にあるニコチン受容体に結合するのを妨げ、喫煙による満足感を抑制します(拮抗作用)
  • チャンピックスがニコチン受容体に結合することで少量のドパミンが放出され、禁煙に伴う離脱症状やタバコに対する切望感が軽減します(作動薬作用)

3-3.服用の仕方

服用の仕方は、飲み始めの3日間は1日1回とし、4日目から1日2回服用します。最初の1週間は、タバコを吸ってもよく、8日目から禁煙を開始します。通常、12週間服用し、その間に5回の診察を受けます。禁煙外来では、毎回呼気一酸化炭素濃度の測定をします。この数値を見ることで、禁煙が継続できているか否かが数字で分かります。タバコを一度でも吸ってしまえば検査でバレますので、殆どの患者さんはプログラムが終了するまでがんばり、禁煙ができるようになります。当院の経験では途中で離脱した方はいませんでした。しかし、治療後も禁煙が継続できているかは不明です。

Doctor shows results to old patient x-ray of the lungs
医師や看護師の禁煙カウンセリングを受けながら行います

3-4.メリット

  • 健康保険等が使える(一定の条件を満たす必要がある)・・禁煙治療は、健康保険等を使って受けることができるのです。自己負担が3割の人は、使用する薬にもよりますが、約3ヶ月の治療スケジュールで、1万3,000円~2万円程度です。
  • 肌の弱い人でも使える
  • 飲むだけなので簡単
  • 接客などの職種の人や、歯やアゴの問題でガムをかめない人でも可能
  • ニコチンを含んでいない

3-5.禁煙外来・病医院を探す

以下のサイトで探すことができます。


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4.薬局で販売されているニコチンパッチやニコチンガム

薬局でも購入できる、ニコチンパッチやニコチンガムによってニコチンを補充することで禁煙による禁断症状を軽くします。しかし、その効果は服用するチャンピックスに劣ります。その理由は薬の効果もありますが、やはり禁煙外来を受診するということで、医師・看護婦によるカウンセリング効果もあります。

やはり、本当に禁煙を成功させたいと思えば禁煙外来を受診することをお勧めします。

5.喫煙は、死なない程度の病気を引き起こし、その結果、やめられるようになる

これほどまでに禁煙は大変です。しかし、不思議ですが脳梗塞・脳出血・心筋梗塞で一度生命の危険に直面するとあっさりやめられる方が多いです。不謹慎かもしれませんが、死なない程度の病気になることは禁煙するためには有効なようです。

young attractive man looking sad worried at hospital bed smoking
大病を経験すると、あっさり禁煙できる方が多いように感じます

6.改めて喫煙のデメリットを知る

タバコが体に及ぼす影響は一般的にもよく知られているように多岐にわたります。

● 肺がん:1日に20本近く吸う喫煙者は非喫煙者に比べ、肺がんによる死亡リスクは約5倍にも跳ね上がります。
● 咽頭がん:喫煙者は非喫煙者に比べ、肺がんによる死亡リスクは約32倍にも跳ね上がります。
● 受動喫煙:夫が1日20本以上喫煙するときの妻の肺がん死亡率は非喫煙者に比べて1.91倍

それ以外にも慢性閉塞性肺疾患(COPD)は真綿で首を絞めるような苦痛が継続します。COPDの詳細については以下の記事をご参照ください。

7.禁煙の経済的効果

禁煙は経済的に見た場合、個人の問題だけでなく、国レベルの経済的効果にまで及ぶようです。

「喫煙を継続した場合に、禁煙を実行した場合に比較して、1人あたり50~80万円程度、総額で約15.8兆円、超過的に医療費が発生するという結果。さらに、禁煙を実行することで、生存年数やQALYという健康アウトカムが向上する」と報告されています。。

一方で、厚労省は禁煙による医療保険者への経済効果を指摘しています。特定保健指導における禁煙の経済効果では、治療を継続した場合、15年目には1,000人の集団で約700万円の黒字化となる、としています。禁煙外来のために喫煙者以外からの保険料や公費を投入しても、長期的にみれば効果はある、ということのようです。

8.まとめ

  • 喫煙=病気です。
  • 禁煙補助剤を有効に使うことが大事です。
  • 最も効果があるのは、医療機関の禁煙外来を受診することです。
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