室温が下がると脳の老化が早まる!5つの理由【認知症専門医が解説】

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Misery

訪問診療を行っていると、特に冬場は患者さんの家によって部屋の温度に違いがあることを痛感します。外では息が白くならないのに、室内では息が白くなるほど寒い家もあります。あまりの寒さで、患者さんが一日中布団の中で生活されている家もあります。それほどまでに寒い部屋で生活されている方がいるのです。そのため経験的に「寒さは体だけでなく、頭にも影響があるのでは?」と感じていました。そんな中「寒さは、脳に悪影響しかない」という報告がなされました。

今回の記事では、在宅医療に取り組む認知症専門医である長谷川嘉哉が「室温が下がると脳が老化する」について解説します。

1.住環境と脳の健康の関係があった!その研究発表とは

慶應義塾大学理工学部の伊香賀俊治教授が以下のような報告をされました。

高知県檮原町と山口県長門市に住む40~80代の150人の脳をMRIで詳細に撮影し、画像をもとに、脳の健康状態を点数化。住んでいる家の居間の室温と点数の相関関係を調査。すると、居間の温度が低い家で暮らす人ほど点数が低いことがわかった。一般的に、高齢な人ほど脳の健康状態は悪く、点数は低くなった。つまり、寒い部屋に暮らす人は、脳の状態が高齢の人に近く、脳が老けているということ。それも、室温が1度低いときに減る点数は、年齢が1つ上がるときに減る点数の約2倍。言い換えれば、室温がほかの人よりも1度低い家で暮らす人は、脳が2歳分も老けているといえる。(女性自身 1/15の記事より引用)

2.なぜ部屋が寒いと脳が老化する?

そもそも、部屋が寒いとなぜ脳は老化するのでしょうか?

2-1.脳の血管へのダメージが血管性認知症を引き起こす

寒さは、血管性認知症のリスクが上がります。寒い環境にいると、身体は体温が下がることを防ぐために血管を収縮させます。その結果、血圧が上がり、脳の血管に動脈硬化性変化を起こします。そうなると、小さな梗塞ができたり、細い血管が切れることで、脳の機能が低下してしまうのです。

2-2.意欲の低下がアルツハイマー型認知症を引き起こす

寒さは、アルツハイマー型認知症のリスクも高めると言えます。人は心地よい環境にいるからこそ、「何か食べよう」、「本でも読もう」、「体を動かそう」といった意欲が出てくるのです。寒い環境にいると、そもそもの意欲が低下します。そんな意欲の低下が、アルツハイマー型認知症の一つの原因となりえるのです。

2-3.食事内容にも影響

生活の基本は、衣食住です。そのため、食べること、着ること、住まうことは共通しています。住む環境が劣悪な患者さんは、食べることも劣悪です。たんぱく質の摂取量が少なく、昔ながらの炭水化物主体で食塩過多の傾向が強いと感じています。結果、脳だけでなく身体自体の不健康さにつながっていることが多いのです。

Sick couple are trying to sneeze in the napkin. They caught a co

寒さはインフルエンザや風邪のリスクも高めます。軽視しないことが重要です

3.部屋が寒いと運動機能も低下する、とは

部屋が寒いと、運動機能も低下します。

3-1.こたつの使用はお勧めしない理由

寒い環境の部屋では、多くの場合、こたつが使われています。認知症専門医としては、こたつの使用はできるだけ避けてもらいたいものです。いったんこたつに入ると出るのが億劫になり、運動する機会が減ってしまいます。その上、こたつに入る際の、「あぐら」は、足や腰に最も負担をかけ痛みの原因となります。

3-2.ベッドの中にいる人も

ひどい人になると、寒さのため一日中、布団やベッドの中で過ごしている方さえいらっしゃいます。家族の方からは、「この人は布団から出たがらない」と言われますが、部屋の寒さを考えるとやむを得ないと感じるほどです。こうなると、本当に日常生活動作は低下してしまうのです。

3-3.脳にとっては運動も情報処理

部屋の寒さのため、こたつや布団の中で過ごすことで、運動する機会が減ってくると、途端に脳の機能が落ちてきます。運動の機会と脳の機能は関係ないと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、脳にとっては、頭を使うことも身体を使うことも同じ情報処理です。運動の機会が減れば、脳の機能も明らかに低下してしまうのです。

inside of japanese kotatsu table heater

こたつから離れられなくなり、必要なものをすべて近くに置くようになります

4.風呂場の突然死は、交通事故死以上

部屋が寒い家は、風呂場はさらに寒いものです。そんな環境から熱い湯船に急に移動すると血圧が大きく変動し、脳血管障害や虚血性心疾患を起こし命に関わります。私も地域の基幹病院で当直をしていた頃は、4年間で10名以上の風呂場での急死を経験しました。

実際、2015年の厚生労働省の調査では、病気なども含めた入浴中の死亡者数は1万9千人以上と推計されています。この数は交通事故(5004人)よりもはるかに多いのです。急激な温度変化は大変危険なのです。

5.対策

脳を老化させないための対策としては以下の方法がお薦めです。

5-1.床暖房

お金もかかるので簡単には導入できませんが最もお薦めです。誤解されている方も多いのですが、床暖とホットカーペットは全く異なります。ホットカーペットは、単に触ったところが温かい「直接熱」です。一方、床暖は「輻射熱」といって、太陽の自然な暖かさや、薪ストーブの熱などと同様の心地よさを感じることができます。私の医療法人でもデイサービスにも導入して大変好評です。訪問診療先でも床暖房が入っている家では、長居したくなるほどです。

*輻射熱:熱をもった物質が放つ電磁波が別の物質にぶつかって熱に変わった時に発生する熱のこと

5-2.倹約せず暖房しよう

床暖の導入は難しくても、とにかく冬場は光熱費を惜しまず暖かくしましょう。訪問患者さんの家によっては、訪問診療時だけ暖房して、終わるとすぐに切ってしまう家庭もあります。そうでなく、皆さんの脳の健康のために暖かくされることをお勧めします。

尚、エアコンの場合は空気が乾燥しますので、加湿も忘れないようにしましょう。何より、加湿をした方がより暖かさを感じます。

5-3.断熱にも気を配ろう

暖房だけでなく断熱も重要です。断熱が十分されていないと、暖房効率がわるく光熱費が余分にかかり、そもそも部屋が暖かくなりません。できれば、窓のガラスは最低でも2重ガラスにして、可能ならサッシの枠も熱伝導の低いものに変えることがお勧めです。

カーテンも断熱機能は重要です。厚手のものを窓のサイズに合わせて利用すると、窓から侵入する冷気を防ぎ、室内の暖気が外に逃げることを防ぐことができます。

Tile floor with floor heating. 3d illustration

床暖房を導入すると、冬でも素足で行動できるようになることがあります

6.まとめ

  • 室温が1度低い家で暮らす人は、脳が2歳分も老けてしまいます。
  • 部屋が寒いと、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症のいずれのリスクも高くなってしまいます。
  • 風呂の寒さは、生命的危険に直結します。
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