高齢者の癌は在宅で看取るのがベスト。その理由とは【在宅医が解説】

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Lonely old asian patient on patient bed in hospital

先日、20年間通院いただいた90歳代の女性が、癌でお亡くなりになりました。最後まで外来通院いただき、在宅医療を開始してから4日後には穏やかな最期を迎えました。亡くなる5日前まで、家族の介護を受けることなく生活は自立していました。

実は、このようなケースは特別なことではありません。そのため在宅医療に取り組む医師の多くは、自分が亡くなるときは、癌での死を希望するほどです。ただし、そのためにはいくつかの条件が必要です。今回の記事では、年間50名以上の在宅看取りを実践している在宅医、長谷川嘉哉が、死ぬぎりぎりまで生活が自立し、最期は穏やかに自宅でなくなるためのコツをご紹介します。

1.高齢者の癌は若年とは異なる、とは

高齢者の癌は、若い方の癌と比べ対応方法が異なります。

1-1.癌と共存している方も

高齢者の場合、癌があってもまったく症状もないことが多いものです。つまり、癌自体と共存していると言えるのです。

1-2.精査しない選択もあり

そのため、通常貧血があれば消化器系の検査をしたり、胸部XPで異常影を見つけたら胸部CT・気管支鏡を行いますが、高齢者の場合はあえて精査しないという選択もあるのです。

1-3.高齢者とは何歳から?

ならば高齢者とは何歳からでしょうか?実は、これは、実年齢では考えません。あくまで、その患者さんの状態から考えます。例えば、80歳を超えても認知症もなく運動機能も維持されていれば積極的な精密検査も考慮します。一方で、70歳でも、認知症があり運動機能も悪く、全身の動脈硬化性変化が強い場合などは敢えて精査をしないこともあるのです。

Group Of Seniors Enjoying Fitness Class In Retirement Home

癌をわずらっていても何事もないように元気にされている方も少なくありません

2.在宅医が癌での死亡を希望する理由

私自身も、医師になってから1,000人以上の看取りを経験しています。私のように在宅医療に関わっている医師に「将来どんな病気で死にたいか?」と質問すると、多くの医師は「癌」を選ぶものです。それは、以下の理由によるものです。

2-1.亡くなる5日前まで生活が自立

これは、データでも示されているのですが、癌患者さんは、平均して亡くなる4〜5日前までは生活が自立しているのです。つまり、食事・トイレ等自分のことは自分でできているのです。さすがに亡くなる、4〜5日前には排泄はおむつ等になりますが、短期間であれば多くのご家族が対応可能です。

在宅医は、脳血管障害などで、10年以上寝たきりの患者さんも経験しています。このような場合、ご家族の負担は相当なものです。それに比べると「がんで亡くなるのも悪くない」と考えるのです。

2-2.痛みもコントロール可能

癌でなくなるというと、痛みに不安を覚える方がいらっしゃると思います。しかし、モルヒネ等を積極的に使うことでがんの痛みはコントロールも良好です。詳しくは、以下の記事も参考になさってください。

モルヒネの副作用は?緩和医療には医療用麻薬の適正使用が必要な理由

3.自宅で穏やかな最期を送るための条件①

高齢者に癌が見つかった場合は、慎重な対応が必要です。

3-1.手術は必要か?

大学病院など、臨床経験や人生経験の少ない若い医師だと何も考えずに手術をしてしまうことがあります。手術によるリスク、合併症、それによるメリットを十分に確認すべきです。その説明を面倒くさがるような医師であれば、手術を含めて治療を任せるべきではありません。医療機関の変更も検討しましょう。

3-2.抗がん剤はほとんど不要

高齢で、手術ができない際に、抗がん剤を薦められることがあります。高齢の場合は、抗がん剤は避けた方が無難です。迷ったときは、以下の質問を主治医にしてみてください。「先生の親、もしくは祖父祖母でも抗がん剤を使いますか?」。私の知る限りでは、高齢の身内に抗がん剤を使用する医師は殆どいないと思います。

3-3.癌治療死を避ける

高齢者は癌と共存していることが多いものです。そんな時に、不要な手術や抗がん剤治療をすると、治療によって亡くなる「治療死」になることが多いものです。主治医とご家族が、真剣に話し合って、無用な癌治療死は避けるべきです。私の外来患者さんも手術も抗がん剤治療をしなかったからこそ、最後まで自宅での生活が送れたのです。

4.自宅で穏やかな最期を送るための条件②

主治医は、緩和ケアに精通した医師を選ぶ必要があります。中には、まったく勉強していない医師がいることも事実です。在宅医療をお願いするには、過去に癌患者さんの看取りを経験し、緩和ケアにも精通していることを確認することが大事です。

一つの無難な目安としては、強化型在宅療養支援診療所を選ぶことです。強化型在宅療養支援診療所は以下の基準を満たしているので安心です。

  • 電話や訪問での診療を24時間対応できる体制。
  • 近隣の医療機関との連携により、24時間対応可能な医師を常に3名以上確保
  • 過去1年間の緊急往診実績が5件以上
  • 過去1年間の住宅における看取りの実績が2件以上。

5.自宅で穏やかな最期を送るための条件③

医療以外のサービスも利用することが重要です。

5-1.訪問看護を利用する

在宅医療においては、医師以上に看護師の方が頼りになることが多いです。医師の指示のもと、医療行為も行えますし、状況によっては介護士の代わりに、介護行為も行えます。在宅生活においては、「主治医以上に主治看護師が重要」とも言われる所以です

5-2.経験豊富なケアマネが望ましい

看取りの場においては、医師も看護師も患者さんにつきっきりになります。そんな時に、ケアマネが疲弊した介護者のフォローすることが大事です。看取りの際のケアマネの役割はとても重要ですので、経験の乏しいケアマネには交代してもらうことさえあります。

5-3.「介護ベッド」をレンタルする

元気なうちは、布団で寝ようが、家庭用のベッドで寝ても問題はありません。しかし、在宅での看取りを迎えるには、ベッドの高さが変えられ、ギャッジアップできるか否かは重要です。これによって介護者の負担も減らしますし、患者さんの呼吸を楽にする効果もあるので、積極的な利用が必須です。

6.まとめ

  • 高齢者の癌は、若い方の癌と比べ対応方法が異なります。
  • 手術・抗がん剤治療による、癌治療死は避けるべきです。
  • 癌と共存して、在宅で看取ることをお勧めします。
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