すでに老いた人、これから老いる人、すべての人に捧げられる。・・映画「しわ」

2013-12-13

認知症は、以前から映画でよく取り上げられています。1973年には有吉佐和子さん原作の映画「恍惚の人」、以前にもブログで紹介した、「きみに読む物語」、「やさしい嘘と贈り物」などです。ただし、以前はあくまで認知症は頻度的にも珍しいというスタンスで映画が撮られていました。見ていてつらいけど、何となく映画の世界でのことと“フィクション的”な感覚でした。しかし、2013年6月の認知症の患者数は462万人。つまり、65歳以上の高齢者の15%が認知症です。こうなると、多くの人にとってフィクションでなく、まさに現実、ノンフィクションになってきています。

今回、 スペインのアニメーション映画「しわ」(三鷹の森ジブリ美術館配給)をDVDで見ました。この映画は、スペインで公開されるや社会的に大きな反響を呼び、スペインのアカデミー賞と呼ばれる第26回ゴヤ賞で「最優秀アニメーション賞」「最優秀脚本賞」を受賞。また、教育番組の世界的なコンクールである「日本賞」の2012年度グランプリを受賞した話題作です。

認知症の映画では、専門医の立場では“一言”言いたくなるような内容が多いのですが、アニメでありながらとても良く描かれていました。

主人公が、現在も自分が銀行員であると思い込んで家族に接してしまう様子は、失見当識により時間軸が狂った様子としてうまく描かれています。
認知症の患者さんが、忘れていしまうことに対して、とても“不安”感じる様子も分かり易いです。
財布や時計を自分でしまったことを忘れてしまうが上に、他人を“泥棒”と思い込んでいまう様子。介護の現場で最も問題になる“被害妄想”の具合がとても良く描かれています。
相手の言葉を繰り返すだけの老人は、医学的に言う“反響言語”として描かれています。


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患者さんたちが“医師や介護者は、俺たち(患者さん)より、家族のご機嫌をとることを第一にしている”という発言がありました。グループホームを運営しているものとしては反省すべき点です。
そして、高度に進行した場合は映画では2階の部屋ですが、日本の現実では精神病院、もしくは特別養護老人ホーム、老人保健施設への入所となります。

とても重いテーマですが、認知症は多くの人にとって避けることはできません。アニメーション映画「しわ」は、“すでに老いた人、これから老いる人”に捧げられたものです。鑑賞をお勧めします。

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