専門医直伝!「誰も教えてくれない」医師の診断書書き方&書かせ方

専門医直伝!「誰も教えてくれない」医師の診断書書き方&書かせ方

医師の診断書には、とても大きな力があります。患者さんにとっては、必要なシーンは意外と多いものです。

しかし、医師は、医学教育において学生時代はもちろん、医師になってからも診断書の書き方を学ぶことはありません。つまり、多くの医師は診断書の書き方や重要性を知らないのです。そのため医療の現場で、医師側から診断書作成を提案されることはないのです。

ならば患者さん自身が診断書について学び、積極的に医師に働きかけましょう。今回の記事では、そのための診断書の書き方書かせ方をご紹介します。もちろん、多くの医師の方々にも読んでもらいたいものです。

※ページ内にて「インフルエンザの診断書」について書き方例とPDFフォーマットをご用意しました。診断書の書式をお持ちでない医師の方はご利用ください(2018.1.12アップデート)

1.診断書は医者任せではいけない理由とは

私が若かりしとき、他の医師と同様に家族に頼まれたままの診断書を書くことしかできませんでした。

そのころ、外来で50歳代の若年性アルツハイマーの患者さんを経験しました。認知機能障害のため退職され、その結果、住宅ローンを滞納して自宅を競売、自己破産の末、生活保護になりました。

もし自分に診断書や社会保障の知識があれば、患者さんの不幸を軽減化できたのではと後悔したものです。それをきっかけにファイナンシャルプランナーの勉強をし、資格をとり、また診断書の勉強をするようになりました。

お陰様で、最近では一万人を超える保険営業マンや医師への講演の機会を頂いています。そこで毎回語っていることは、「医師は診断書でも患者さんを救える」です。

しかし、残念ながら多くの医師は診断書の重要性を理解していません。だからこそ患者さん自身が、自ら学び、情報を収集して使える制度を利用するために診断書をお願いしましょう。この国は「知っている人が得をする」のです。

Senior couple at home with many bills
診断書をもって、その後の生活に関わる認定を受けることができます

2.診断書の種類と提出機会は思った以上に多い

そのような医師が記載しなければならない診断書は、公的なものだけでも50種以上に及びます。認知症や当院の関連で多い代表的なものを紹介します。

・車の運転の可否証明書・・・高齢になって、小さな事故が増えてきたときに運転継続の可否についても、医師の診断書が必要なことがあります。

これについては、「免許返納すべき5つの症状と5つのメリット、実際の方法と事例の紹介」も参照してください。

・傷病手当・・・サラリーマンが、病気やケガで会社を休んだときは傷病手当金が受けられます。 傷病手当金は病気休業中に被保険者と家族の生活を保障してくれます。

・障害年金・・・公的年金に加入し、一定の保険料納付要件を満たし、かつ、障害の状態などの障害年金の支給要件を満たした場合に支給されます。障害が残れば、一生支払われます。しかし、約10万人程度の方が本来は障害年金の適応であるのに、受給されていないといわれています。

・身体障害者手帳・・・身体障害者が、それを対象とする各種制度を利用する際に提示する手帳で、身体障害者が健常者と同等の生活を送るために最低限必要な援助を受けるための証明書です。障害者手帳3級以上になると(最高度は1級。障害を複数もつ場合は、各部位に対して個別に等級がつき、その合計で手帳等級が決定)医療費も無料となります。

・特別障害者手当・・・精神又は身体に著しい重度の障害があるために、日常生活において常時特別な介護が必要となる20歳以上の在宅障害者に支給される手当です。私が経験したなかでは最も支給漏れが多い制度です。

・介護保険(主治医の意見書)・・・主治医の意見書によって、介護サービスを受ける際に、その状態がどの程度なのかを判定するものです。

この他に、民間保険会社の医療保険、疾病保険(がん保険その他の三大生活習慣病保険など)、介護保険、自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書などの証明書類があり、その数は年々増加し、記載内容も詳細化しています。また、同じカテゴリーの診断書でも、保険会社によって書式や様式が異なり、さらに一人の患者さんで数枚の診断書発行が必要となることもまれではありません。

3.効果的な診断書の書き方とは

医師は、医師法第十九条二項の法規定により、患者さんから診断書交付の請求があった場合には、記載・発行する義務があります。診断書は診察に当たった医師のみが発行でき、社会的に必要性が強いので、その発行を拒むことはできません。

ここでは決まった書式がない場合の、診断書の書いてもらい方を紹介します。長期の療養が必要になった場合を例にします。

診断書には以下の点は、最低限書いてもらいましょう

  • 患者さんの氏名、現住所、生年月日、年齢
  • 病名、医師の所見、療養上の注意点
  • 療養期間の見込み

療養に要する期間をきちんと確認しましょう。最低限、その期間は休職して治療に専念しなければならない期間です。診断書には、「〇月〇日~〇月〇日まで、〇〇のため、休職を要する」などと記載します。通常、療養の場合は14〜28日間程度を上限とします。通常の疾患で、いきなり一か月以上の療養期間を予想することは難しいからです。そのため、さらに長期に及ぶ場合は、再度診断書を交付してもらいます。

  • 医師の氏名、医師の印鑑
  • 病院名、病院住所、病院の角印(角印で済ますところもあります)

診断書を受け取ったら、内容に間違いがないか確認をしましょう。会社を休職するにあたって、どういう理由で休むのかが書かれています。個人情報などにも間違いがないかチェックなさってください。

【医師は診断書を一枚でも書きたくない】

医師は、診療後に疲れた体で、様々な様式の診断書作成を書いています。膨大な書式がある診断書、証明書の発行業務が多大な負担となっていることは、労働実態調査の結果から明らかになっています。

そのため、一枚でも診断書を書きたくないと思っています。逆に、その辺を気遣って依頼するとスムーズに書いてもらえるかもしれません。


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例えば、「○月○日が提出期限です。2週間あるので、その間お手透きの際に書いていただければ」などです。

自分は患者さんの生活を守るためにできるだけ積極的に取り組もうとしていますが、思った以上に過度な負担があり、それを苦にする医師も少なくないと思います。その辺をご理解頂ければと思います。

インフルエンザの場合は下記の通りとなります。

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このインフルエンザ用の診断書フォーマットをPDFにて配布致しますので、医師で必要な方は下記からダウンロードして使用なさってください。

インフルエンザ診断書PDF

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潰瘍性大腸炎の例

4.診断書作成にかかる費用

一言で診断書の料金といっても、とても幅があります。なぜなら診断書は健康保険の適用外だからです。そのため各医療機関ごとに自由に料金設定することが許されています。

通常の、病欠の診断書、おむつ証明書のように数行で終わるものは2〜3,000円が多いようです。

一方、入院・通院証明書のように保険会社の様式に記載するものや、死亡診断書は4〜5,000円、身体障害者手帳や障害年金のように、手間がかかり、患者さん自身も生涯にわたってメリットを享受できるものは7,000円前後に設定されているようです。もちろん、医療機関によって金額には差があります。

但し、傷病手当の診断書は健康保険から支払われるので費用は掛かりません。また介護保険の主治医の意見書も介護保険から支払われるので費用は掛かりません。

5.医師が診断書を発行しなくてもいいケースがある

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診断書を書くことによって悪影響が生じる可能性がある場合は断れます

医師の診断書には大変な効力があります。そのため、社会に対する責任が発生します。本来は診断書作成は義務ですが、以下のような正当な理由がある場合は拒否することできます。

5−1.患者さんに病名を知らせることが好ましくないとき

患者さん自身への、がん告知が拒否されている場合などがこれにあたります。

5−2.診断書が恐喝や詐欺など不正使用される恐れがあるとき

暴力団の脅しで、偽りの診断書を強要される場合などです。偽りの診断書作成は、公文書偽造で医師が有罪となりますので、断ることができます。

5−3.雇用者や家族など第三者が請求してきたとき

患者さんのプライバシーや守秘義務に抵触するからです。もちろん、本人ないし承諾権者の承諾がある場合は発行可能です。

6.頼み方・3つの知識

必要な診断書を穏便に書いてもらうための依頼の仕方をご紹介します。

6−1.診断書の目的を伝える

まずは、診断書に必要な情報と目的を伝えてください。診断書を書く医師として、目的が分からない診断書を依頼されるとても困ります。

例えば、「仕事を休職するため」、「医療保険を申請するため」などの目的を伝えましょう。同時に、診断書の提出先も伝えてください。仕事を休職するためなら会社、医療保険の申請のためなら保険会社となります。

会社や保険会社によって、診断書に書いておきたい内容は違うので、必要な情報を正確に伝えましょう。

6−2.小さなクリニックでは医師に直接依頼する

小さなクリニックであれば、診察の際に医師に直接頼んでください。ただし、診察中は次の患者さんがいらっしゃいますから、後日診断書を受け取ることになります。

総合病院や大学病院などの大きな病院は、診断書や各種証明書発行専用の窓口で申し込みます。そのため、医師に診断書の目的・提出先を伝えることができません。申し込みの際は、手紙等で、診断書の目的・提出先を書かれることをお勧めします。

6−3.医師以外が書いてくれる可能性も

診断書は医師が書くものと思われているかもしれません。しかし、平成20年度の診療報酬改定で新設された医師事務作業補助体制加算により、医師の指示があれば事務職員が医師の補助者として記載代行が可能になりました。

そのため、医師が診断書について学ぶ機会が減り、医師の側から診断書を提案されることもさらに減っていくと思われます。

7.診断書一枚で患者さんを救えた事例

50歳代でくも膜下出血を発症した患者さんがいらっしゃいました。

半年は会社も休職扱いにしてくれましたが、以降は退職。多額の住宅ローンも抱えており、傷病手当だけでは生活が成り立ちませんでした。そのときケアマネージャーさんが、とにかく私のクリニックに受診しなさいとアドバイスされました。

発症して半年でしたから、障害者手帳を交付して医療費を無料にし、同時に特別障害者手当も申請し、月額26,000円程度の受給が決定しました。傷病手当が切れる一年半の時点で障害年金を申請。さらに、高度障害の適応であったため、住宅ローンを免除してもらい、同時に生命保険の死亡保険金を受け取りました。とりあえず、経済的不安からは解放できたようです。

50歳代で高度障害が残ったことは大変不幸です。診断書には、そんな不幸を最小限にする力があります。これら一連の書類の流れを、医師側からの提案で実行しました。すべてのケースで対応できるわけでは無いのですが、診断書の力が発揮できた好例でした。

8.まとめ

  • 世の中には、医師の診断書によって利用できる社会保障・民間保険がたくさんあります。
  • 医師は診断書について学ぶことはなく、最近では診断書の作成すら事務員が代行できるようになりました。
  • 今後も医師の診断書の知識が上がることは期待できません。患者さんが自ら学び、情報を収集して使える制度を利用しましょう。
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