睡眠不足の機長が操縦する飛行機に乗りますか?

2013-03-04

多くの勤務医の先生方が当直勤務をするときには、昼間は通常の勤務を行い、そのまま当直に入ります。仮眠をとれることもありますが、場合よっては一睡もできません。仮眠が取れたとしても、いつ電話が鳴るかわからない環境では熟睡はできません。朝を迎えると、そのまま日中の勤務を行います。不思議と、軽い興奮状態のためか何とか勤務はしていたものでした。しかし、その労働時間たるや前日の8時30分から、翌日の17時30分として連続32時間です。

自分が人を雇用するようになって労務について勉強すると、いかなる解釈をしてもこのような勤務は認められないことが分かりました。その上、当直にはわずかな手当が付くだけであった点も不思議でした。しかし、勤務医の立場では、労務の問題や賃金の問題を口にすることはタブーであったためか、黙って従っていたものでした。

その中で、画期的な判決がでました。『奈良県立奈良病院の産婦人科医2人が県を相手取り、夜間・休日の当直勤務に対して割増賃金を支払うよう求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(大谷剛彦裁判長)は12日の決定で県側の上告を退けた。当直は労働基準法上の時間外労働に当たるとして、県に計約1540万円の支払いを命じた1、2審判決が確定した。同法は、時間外や休日に労働させた場合、通常より割り増しした賃金を支払うと規定。2人は2004~05年、各年100回以上の当直をこなしたが、県は「医師の当直は待機時間が多く、時間外勤務に当たらない」として、1回2万円の手当だけ支給していた。県には割増賃金を支払う義務があると指摘。2審・大阪高裁も支持していた。』


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経営者の立場としても極めて妥当な判決だと思います。厚生労働省や各病院は当直勤務に対して適切な割増賃金を払うか、休みを取ってもらうかの対応が必要となっていきます。もちろんコストは増加しますが、これは本来払う必要のある費用ですのでやむを得ません。

それ以前に、当直明けで寝不足の医師に診察してもらう患者さんは、『睡眠不足の機長が操縦する飛行機に乗る』ようなものです。各病院早急な改善が必要であると思われます。

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