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2008年4月19日(土)岐阜新聞掲載

素描 在宅で死ぬということ


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皆さん、最後はどこで死にたいですか?この質問に多くの人は、自宅で死にたいと答えられる。しかし残念ながら現在約80%の人は、自宅以外の病院、施設で死を迎えられている。自宅で亡くなることが出来るのは20%の恵まれた人々だけである。

当院では在宅死の希望をかなえることを目指している。開業8年で約160人の人を在宅で看取らせていただいた。2年前、自宅医療を積極的に行なう診 療所、つまり「在宅支援診療所」という制度ができた。全国で約1万件の診療所が登録した。そのうち、年間10人以上の在宅死を行った診療所は、わずか 200件であった。当院もその中に含まれたことは自信になったが、登録している「在宅支援診療所」のレベルアップの必要を感じた。

在宅死を実現するには、医師の力だけでは不可能である。訪問看護婦、介護支援専門員を中心とする在宅サービスとの連携が重要となる。従来のような医 師を頂点とするピラミッド型ではなく、あくまで患者さんを中心として各職種がそれぞれの業務を行なう「クライアント中心主義」が必要がある。その中では、 医師も一つのサービスに過ぎないのである。

在宅で亡くなる人には、50歳代の悪性腫瘍の人や90歳代の大往生の人まで多岐に及ぶ。自宅に戻ると、皆さん病院に入院されていた時より状態が改善 される。これが在宅の力かと感じる。我々の取り組みは、決して新しい試みではない。昭和30年代は現在とは逆に、自宅外で亡くなる方は20%に過ぎず 80%は在宅で亡くなっていたのである。

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