認知症とは

認知症の治療

認知症と診断した場合、当院では薬物療法と脳リハビリの2本立てで治療を行なう。

薬物療法は、現在アリセプト1種類のみが認可されている。3mgから開始して5mgが標準治療である。昨年末、10mgの使用も可能となった。
一方、海外ではイチョウ葉エキスも適応がある。日本では健康食品であるため安価な中国製が出回っている。海外での効果が認められているのは、ドイツのシュワーベ製だけであり、1ヶ月分6千円程度で手に入る。業者によって相当に高額であるので注意が必要である。

脳リハビリは、公文の学習療法を使っている。簡単な音読と計算が主体となる。
人間の頭は、複雑な作業ではかえって脳の一部しか使わなくなってしまう。簡単な作業のほうが、脳全体を使うためリハビリには有効である。身体のリハビリを思い浮かべて欲しい。リハビリの動き自体はどれも簡単なものである。それを繰り返す事で複雑な動きが可能となるのである。
脳リハビリの取り組みについては、認知症のレベルによって違いが見られる。極めて早期の方と、逆に高度に進行された方は、抵抗なくリハビリ導入が可能である。少し進行した中等度の方々がリハビリへの抵抗が強い。リハビリをする事で、自分ができない事を認識する苦痛のためと考えられる。

これらの薬物療法と脳リハビリは認知症の改善・進行予防に一定の効果が認められる。しかしそれ以上に感じるのは、ご家族の関わりである。関心を持ち、声をかける、一緒に散歩をする、遠方からリハビリに通う。実はその事自体が、最も効果のあるリハビリなのである。

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認知症に対するパワーリハビリの効果

パワーリハビリ(以下パワリハ)という言葉をご存知だろうか?6機種の機械を使用する、マシントレーニングである。高齢者とマシンというと違和感をもたれるが、極めて軽負荷であるため、安全性に問題はない。

3つの特徴がある。一つ目は、老化を改善するリハビリである点。健常者も疾患を抱えた方も、その基礎には老化がある。そのため老化を改善する、パワリハはすべての疾患に効果がある。
二つ目は、使っていない、眠っている筋肉を使うことである。パワリハは筋力をつけるわけではない。6種類の機械は、通常の生活では使われない部位に対応することで日常生活動作を改善する。
3つ目は、行動変容をもたらすことである。行動変容とは、「行動的・心理的習慣」を変化させることである。身体的な動きが改善される事で自信がつき、外出の意欲が高まる。またパワリハにより脳内モルヒネ様物質が分泌されため、うつ症状や認知症症状が改善される。

当グループでは、5年前よりデイサービスでパワリハを行なっている。当初、どれだけの方が取り組んでくれるか疑問であった。現在では、利用者様の9割以上の方が取り組み、何らかの改善を認めている。多くの利用者様は、日常生活動作が低下していく事に不安をもたれている。そのため、「いつまでも自分の事は自分で」という願望で、パワリハに取り組まれているようである。